エッセイ『登大路・往来記』

エッセイ一覧

第10回 初秋 からくれないの錦を探してもみじ狩り
~竜田川から朝護孫子寺(信貴山)へ

紅葉、と聞けば竜田川。”ちはやぶる”の枕詞で始まる古今和歌集の在原業平(ありはらのなりひら)の歌があまりにも有名で、流れゆく川面を落ち葉が赤く染める光景は竜田川という固有名詞にこだわらなければ日本人なら誰でも思い浮かべることのできる共通の風景かもしれない。

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第9回 初夏 なら燈花会
明かりが広がる壮大な夜

蒸せるほどの夏の宵、うちわを持って古都へ、奈良へ―。
わざわざ八月の暑い盛りを選んでやって来たそのお目当ては「なら燈花会(とうかえ)」。世界遺産がひしめく奈良には高いビルもネオンもなく、夜ともなれば目印程度のライトアップで古代の建築が照らし出されるくらい。この期間中は、広大な奈良公園がろうそくの明かりの花に彩られるのだ。

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第7回 初冬 女帝の願い 時を超え
東大寺お水取り

奈良は、私の作品で『天平の女帝 孝謙称徳』を書くため足繁く通った土地だが、主人公との縁は書き終えればおしまいというのではなく、むしろ完成させてからの方が深まっていくようで楽しくなる。たとえば東大寺のお水取りで知られる「修二会(しゅにえ)」。今年で1266回も続く伝統行事だが、執筆前には気づかなかったのに、改めて訪ねてみると、ここにも女帝の影が色濃く浮かび上がってくる。というのも、第一回の法要が行われたのは天平勝宝4年(752)、まさに女帝の治世の時代なのである。

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第5回 初夏 空中散歩で天上界へ 大和葛城山の別世界にあそぶ

奈良の地形は、「ゆるやかな山に囲まれた平坦な盆地」と表現されることが多い。東に笠置山地、西に生駒金剛山地。たしかに右にも左にも山はある。でも、地面からでは、方向音痴の私はどれがどれだかいつも迷う。きっと高いところに登って奈良を一望したら、一発で納得するのだろうけどなあ。でも奈良にはそういう高層建築がない・・・。

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第3回 初冬 奈良は夜こそ魅力的 深夜の闇を神様が通る 春日若宮おん祭

奈良に遊びに来る時は、たいてい昼の明るい間に観光を終え、日暮れとともに帰っていく、というスケジュールが多いのではないだろうか。実際、お寺の拝観時間や博物館の入館時間も夕方5時にはきっかり締め出されるのだから、さもあらん。しかしそれではもったいない。本当の奈良の魅力は、日が暮れ宵闇が降りて始まる、と言っても過言でないのだ。

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