第19回 初冬
土の呼吸が聞こえる器と過ごす
~赤膚焼の窯元を訪ねて
焼き物が好きで、二十代の頃、陶芸を習いに通ったこともある。弟子入りを許してもらえなかったのは無念だが、深入りしていたら物書きとしての今はなかったかもしれない。
焼き物が好きで、二十代の頃、陶芸を習いに通ったこともある。弟子入りを許してもらえなかったのは無念だが、深入りしていたら物書きとしての今はなかったかもしれない。
タイトルを「じごくツアー」なんて軽々しいものにしてしまったが、日頃、仏教のおしえから遠ざかりがちな現代人には、実際、地獄をディープに表すことは難しい気がする。
久しぶりの奈良だから、朝食の後は散歩が何よりのお楽しみ。いつ来ても変わらない寺院の空気はもちろん、ホテルに近い「ならまち」は、来るたび何か新しいものが生まれている。
百年、千年、人ならそんなに長く生きられない歳月を、確かに存在し続けてきた建造物。
言うまでもなくそれらは時の証人であり、人類が残した宝であるのはまぎれもない。
冬の奈良は、若草山焼きが終わると少し静かになる。それは、東大寺のお水取りまでの間、世間を賑わせるような大きな行事が静まるため、外から来る観光客がオフシーズンととらえるからだろう。
しかし、神様や仏様にオフシーズンがあろうはずもない。それぞれの寺社では地元の方々に密着した祈りの行事が続いている。その一つが、節分の行事。
奈良に来た日は登大路ホテル奈良でいただく食事が何よりの楽しみ。この日も、洗練された本格フレンチの皿には地元奈良の食材がいろいろ登場した。黒滝村のあまご、大和当帰葉(やまととうきば)……、それはどこ? と産地を聞くだけで旅のイメージが広がりそうだ。
奈良が、動いている。
いや、千三百年の歴史を誇る古都が動いたりするわけはないのだが、近年まであった景色が一変すると、やはり「動いた」としか言いようはなくなる。それほどに景色に大きな変化が起きたのが、興福寺だ。
花が奈良の古寺を彩る季節や名所はたくさんあって行き先には困らないが、できれば仏像と向かい合う時間もほしい、
なんて欲張る時は、実際に行ってきた人の話が確実だ。
以前、行き先も決めず、ただ花がありそうだからと桜井に向けてタクシーに乗った時のこと。やはりハズレは避けたいので、まずは運転手さんに「オススメの古寺はありますか」と訊いてみたのだ。
「室生寺はいつ行ってもいい」
そう言ったのは写真家の土門拳(どもんけん)だ。
彼は昭和14年に初めてこの寺を訪れたのをきっかけに、全国の寺社の写真を撮り続け、名作『古寺巡礼』が生まれた。
学生時代、私もこの本で室生寺を知った。花の写真もある、若葉の写真もある。なのに、白と黒だけで映し出された杉木立や、山からたちのぼる靄、石段の陰影やお堂の影……。どれも、見る者の目を釘付けにする。
仏さまの姿も、みな美しい。力みなぎる十二神将像、慈愛に満ちた薬師如来像、すべてを見晴るかすように遠い目をした十一面観音像。モノクロームの写真の中で時を止め、静かに静かに息づいておられる。
紅葉、と聞けば竜田川。”ちはやぶる”の枕詞で始まる古今和歌集の在原業平(ありはらのなりひら)の歌があまりにも有名で、流れゆく川面を落ち葉が赤く染める光景は竜田川という固有名詞にこだわらなければ日本人なら誰でも思い浮かべることのできる共通の風景かもしれない。
蒸せるほどの夏の宵、うちわを持って古都へ、奈良へ―。
わざわざ八月の暑い盛りを選んでやって来たそのお目当ては「なら燈花会(とうかえ)」。世界遺産がひしめく奈良には高いビルもネオンもなく、夜ともなれば目印程度のライトアップで古代の建築が照らし出されるくらい。この期間中は、広大な奈良公園がろうそくの明かりの花に彩られるのだ。
長谷寺といえば、まず本堂までの長い登廊が目に浮かび、高校時代に習った古典のあれこれを思い出すだろう。なにしろ「隠国(こもりく)の初瀬」という枕詞まで有し、数多くの歌に詠まれて日本文学に数多く登場する古刹である。
奈良は、私の作品で『天平の女帝 孝謙称徳』を書くため足繁く通った土地だが、主人公との縁は書き終えればおしまいというのではなく、むしろ完成させてからの方が深まっていくようで楽しくなる。たとえば東大寺のお水取りで知られる「修二会(しゅにえ)」。今年で1266回も続く伝統行事だが、執筆前には気づかなかったのに、改めて訪ねてみると、ここにも女帝の影が色濃く浮かび上がってくる。というのも、第一回の法要が行われたのは天平勝宝4年(752)、まさに女帝の治世の時代なのである。
天河神社(てんかわじんじゃ)。
――まるで天とこの世をつなぐ清らかな地を思わせる美しい名だ。
でも、どこにあるのか、知っている人は少ない。
奈良の地形は、「ゆるやかな山に囲まれた平坦な盆地」と表現されることが多い。東に笠置山地、西に生駒金剛山地。たしかに右にも左にも山はある。でも、地面からでは、方向音痴の私はどれがどれだかいつも迷う。きっと高いところに登って奈良を一望したら、一発で納得するのだろうけどなあ。でも奈良にはそういう高層建築がない・・・。
日本人なら誰でも、さくらが咲くと心が浮き立ち、仲間を誘ってお花見に行こうとベクトルが働く。そしてどこへ行こうか考える時、日本一をうたう名所が数々あって迷うものの、吉野を知らない人は、まずないだろう。
奈良に遊びに来る時は、たいてい昼の明るい間に観光を終え、日暮れとともに帰っていく、というスケジュールが多いのではないだろうか。実際、お寺の拝観時間や博物館の入館時間も夕方5時にはきっかり締め出されるのだから、さもあらん。しかしそれではもったいない。本当の奈良の魅力は、日が暮れ宵闇が降りて始まる、と言っても過言でないのだ。
楽しかった旅は、次にリピートする時、やっぱり一番仲のいい友人と分かち合いたくなる。だから登大路ホテルでの滞在は、いつもそういう動機で次へとつながっていく。
若草萌える奈良の初夏。 日ざしも輝き、野に山に、すべての生命が生い立つ五月を過ぎれば、奈良ではもう一つ、 あたらしい命が生まれる季節を迎える。それは、奈良のシンボルともいえる鹿の赤ちゃんたちだ。
定員(ドライバー含む:4人)
荷物積載量目安:スーツケース2個
定員(ドライバー含む:4人)
荷物積載量目安:スーツケース2個
定員(ドライバー含む:6人)
荷物積載量目安:スーツケース2個
定員(ドライバー含む:8人)
荷物積載量目安:スーツケース5個
定員(ドライバー含む:9人)
荷物積載量目安:スーツケース6個
定員(ドライバー含む:4人)
荷物積載量目安:スーツケース2個
定員(ドライバー含む:4人)
荷物積載量目安:スーツケース2個
定員(ドライバー含む:4人)
荷物積載量目安:スーツケース2個