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【綴る奈良vol.7】奈良の夏祭り―愛宕祭と立山祭―

橿原市八木町の愛宕祭

橿原市八木町の愛宕祭

 

八木町の愛宕祭

 

近鉄大和八木駅の東南に位置する橿原市八木町。奈良盆地を南北に貫く下ツ道(しもつみち)と、東西をつなぐ日本最古の官道・横大路(よこおおじ)が交差し、古くから交通の要衝として知られた町です。お伊勢参りや吉野・大峯への巡礼など、多くの旅人が行き交い賑わった道を、俳聖・松尾芭蕉も歩きました。芭蕉の有名な紀行文「笈の小文(おいのこぶみ)」には、奈良から大阪へ向かう途中で八木に投宿したという一文と、藤の花を詠んだ俳句が残されています。

 

この八木町周辺で、毎年8月23日から25日の3日間「愛宕祭(あたごまつり)」が盛大に行われます。今に残る下ツ道の道幅は現代人からすると狭いくらいですが、道の両側にずらりとならんだ夜店をくぐり抜けるように進むと、懐かしいような、わくわくするような気分になります。

 

「八木の札の辻交流館」の2階から下ツ道を眺める

「八木の札の辻交流館」の2階から下ツ道を眺める

 

八木の愛宕祭は、江戸時代中頃(18世紀)に始まったといわれる火難除けのお祭りです。一昔前までお祭りの前には、防火の神様として知られる京都の愛宕神社へ地元の人たちが揃ってお札をもらいに行っていたのだとか。奈良の愛宕信仰は八木町が最も盛んだといわれており、お祭りの3日間は町内周辺30数か所に大小の祭壇が作られます。道に設置される立派な祠もあれば、通りに面した家の座敷に置かれた祭壇もあり、独特の陰翳を生み出しています。夏の野菜を使ったユーモラスなお供え物をチェックするのも楽しみの一つです。

 

「八木の札の辻交流館」の2階から下ツ道を眺める「八木の札の辻交流館」の2階から下ツ道を眺める

縁日で賑わう下ツ道(左)と祭壇の供え物(右)

 

そして、愛宕祭のもうひとつの呼び物が、町民のつくる「立山(たてやま)」です。「造り山」とも呼ばれる手作りの飾り物のことで、旬の話題や時事ネタを取り入れて毎年新しく製作されます。文化祭の出し物のような素朴さの中にも、人形を電動仕掛けにするなどさまざまなアイディアが詰まっています。エリア最北端、北八木町の愛宕神社の横には立山専用のスペースがあり、当番の町民が今年の出し物について話し合い、数ヶ月前から立山の製作を始めます。
下ツ道を南下した晩成小学校の運動場では盆踊りも開催され、普段は静かな歴史の道の、年に一度の華やいだ夜が更けてゆきます。

 

北八木町の愛宕神社と立山

北八木町の愛宕神社と立山

 

北八木町の愛宕神社と立山北八木町の愛宕神社と立山

下ツ道と横大路が交差する「札の辻」にある橿原市指定文化財「八木札の辻交流館」(上)は元は旅籠
西国三十三所名所図会(ずえ)にも描かれている(下)

 

広陵町の立山祭

 

一方、北葛城郡広陵町三吉(みつよし)の大垣内(おおがいと)地区では、毎年8月24日に「大垣内の立山祭」が行われます。こちらは地蔵盆にちなんだお祭りで、広陵町の民俗文化財に指定されています。専光寺の地蔵堂を中心に夜店もにぎわい、太鼓の演奏や練り歩き、花火の打上げが行われるのも見所となっていますが、やはりメインは町内の民家や公民館など6か所に展示される「立山」で、大勢の人が路地のそぞろ歩きを楽しみます。

 

広陵町の立山の特徴は、なんといっても等身大のリアルな人形です。地元には30体ほどの人形の頭や手足が大切に残されており、毎年話題になったドラマの登場人物やタレントなどに似せて衣装が整えられます。立山をつくるのは地元の保存会の人たち。今年の出し物はなんだろうと、楽しみにやってくる人が年々増えているそうです。

 

北八木町の愛宕神社と立山北八木町の愛宕神社と立山

広陵町「大垣内の立山祭」。大河ドラマの一場面を再現(上)
民家の玄関に展示されたリアルな動きの獅子舞(下)

 

お祭りのあとは、まちあるきを楽しむ

 

奈良には著名な神社仏閣の祭礼が多く、それらを見て回るだけでも一年があっという間に過ぎてしまいそうですが、町ごとに連綿と受け継がれてきたお祭りがたくさん残っているのも、奈良の大きな魅力です。たとえば、夏祭りの夜のハレの風景を楽しみ、改めて普段の町を歩いてみると、思わぬ発見をすることがあります。何気ない場所にも歴史が潜んでいる奈良ならではの「まちあるき」は、無尽蔵に用意されています。

 


 

八木の愛宕祭

 

広陵町の立山祭

 

登大路ホテル奈良からのアクセス

 

橿原市八木町へ

近鉄奈良駅から大和西大寺駅経由、橿原線大和八木駅南口から徒歩約10分
(大和西大寺駅から大和八木駅までは特急で約20分、急行で約30分)

広陵町三吉へ

近鉄奈良駅から大和西大寺駅経由、大和八木駅で乗り換えて
近鉄大阪線大和高田駅からタクシー(北へ約4キロ)

(大和西大寺駅から大和高田駅までは30分前後)

または、近鉄奈良駅から大和西大寺駅経由、近鉄橿原線田原本駅からタクシー(西へ約7キロ)
(大和西大寺駅から田原本駅までは20分前後)

 

※2018年5月現在の情報です。