相撲と奈良

葛城市相撲館「けはや座」

相撲と奈良

相撲発祥の地

大和葛城山から二上山(にじょうさん/ふたかみやま)の東麓に広がる葛城市當麻(たいま)地区は、奈良と大阪を結ぶ日本最古の官道「竹内(たけのうち)街道」の北にあります。今からちょうど1300年前の720年に完成した『日本書紀』には、この地出身の當麻蹶速(たいまのけはや)と出雲国の野見宿禰(のみのすくね)の力比べが記されています。これが日本の相撲の始まりであると伝えられています。

當麻蹶速と野見宿禰の力比べが記される『日本書紀』 国立国会図書館蔵

當麻蹶速と野見宿禰の力比べが記される『日本書紀』 国立国会図書館蔵

當麻蹶速と野見宿禰

當麻蹶速の名前はおそらく、當麻に住む足蹴りの速い人を表しています。當麻蹶速は日頃から、「この世で自分と互角に力比べができるものなどいるはずがない。強い者とめぐり合って、力比べがしてみたいものだ」と豪語していました。蹶速のことを聞いた垂仁(すいにん)天皇は、蹶速を「天下之力士(あめのしたのちからびと)」と呼び、対等に闘える相手がいないか家臣に尋ねます。そこで推挙されたのが出雲国の野見宿禰でした。宿禰はその日のうちに呼び寄せられ、二人は天皇の前で力比べをします。現在の相撲とは違いキックボクシングのように蹴り合ううちに、野見宿禰の一撃によって腰骨を折られた當麻蹶速が死んでしまいます。勝負を見ていた垂仁天皇は、野見宿禰に當麻蹶速の領地を与え、その場所は「腰折田(こしおれだ)」と呼ばれました。敗れた蹶速は當麻村の人たちから手厚く祀られ、現在に至ります。

當麻蹶速の墓として祀られる蹶速塚

當麻蹶速の墓として祀られる蹶速塚

力比べが行われた場所は桜井市穴師にある相撲神社付近、宿禰に与えられた領地「腰折田」は現在の香芝市良福寺周辺の磯壁付近だといわれています。蹶速も宿禰も伝承上の人物であると考えられていますが、野見宿禰の出身地とされる「出雲国」については、島根県出雲地方のことではなく、現在の桜井市出雲付近とする説もあります。宿禰はその後、それまで慣例だった殉死の代わりに埴輪を発案、土師氏の始祖となりました。

相撲節会

聖武天皇の時代には7月7日に「相撲節会」が行われるようになったことが『続日本記』に書かれています。技や決まり手が発達、立会いや記録係などの役割も整えられました。七夕に相撲節会が行われる理由は、文武の組合せという説や豊作占いや悪霊祓い、服属儀礼説など様々です。春日大社の大祭「春日若宮おん祭」では現在も御旅所祭の翌日に奉納相撲が行われ、奈良市東部山間にあるいくつかの地域には、古い様式の儀式的な相撲が今も伝えられています。

朝廷相撲節会之図(『古今相撲大要』1885) 国立国会図書館蔵

朝廷相撲節会之図(『古今相撲大要』1885) 国立国会図書館蔵

相撲館「けはや座」

近鉄南大阪線の当麻寺駅から當麻寺へと続く歴史ある町並みの途中に、葛城市相撲館「けはや座」と當麻蹶速塚があります。1990年にオープンした同館は、當麻蹶速顕彰だけでなく、国技相撲の普及活動に努め、相撲に関する資料の収集と展示を行う全国的にも珍しい相撲の資料館です。とくにうれしいのは、館内中央に造られた本場所と同サイズの土俵に性別に関わらず自由に上がれること。大相撲の力士になった気分で土俵入りしてみると、テレビで見る大相撲が一層身近に感じられそうです。

葛城市相撲館「けはや座」。奥には二上山が見える

葛城市相撲館「けはや座」。奥には二上山が見える

性別の関わりなく上がることのできる「けはや座」の土俵

性別の関わりなく上がることのできる「けはや座」の土俵

古代の伝承から現代の大相撲まで、館所蔵資料は12,000点に上る

古代の伝承から現代の大相撲まで、館所蔵資料は12,000点に上る

17名もの手形が揃う「歴代横綱手形」

17名もの手形が揃う「歴代横綱手形」

2階展示コーナーには、當麻蹶速から現代までの大相撲略史年表とともに、貴重な資料や写真、実際に使われた横綱のまわしなどがずらりと並んでおり、一巡するとちょっとした相撲博士になれそうです。2020年1月の大相撲初場所で、奈良県出身の力士として98年ぶりの快挙を果たした徳勝龍関や、数々の記録を打ち立てている横綱白鵬など力士関連資料、大正末まで存在した「大坂相撲」に関する資料なども充実しています。

奈良県力士コーナーには98年ぶりに郷土力士として優勝した徳勝龍のダルマも

奈良県力士コーナーには98年ぶりに郷土力士として優勝した徳勝龍のダルマも

吉田司家から第28代横綱の大錦大五郎への免許状など貴重な資料が並ぶ

吉田司家から第28代横綱の大錦大五郎への免許状など貴重な資料が並ぶ

愛らしい相撲人形のコレクション

愛らしい相撲人形のコレクション

「けはや座」から西へ500メートル余り直進すると、612年草創の當麻寺仁王門が見えてきます。境内には白鳳時代の梵鐘など多くの国宝があり、毎年4月14日の夕刻には、當麻曼荼羅を織りあげた中将姫が西方浄土へ迎えられる場面を荘厳に再現した「當麻寺練供養会式」が行われます。

當麻寺本堂と西塔(ともに国宝)

當麻寺本堂と西塔(ともに国宝)

登大路ホテル奈良からのアクセス

葛城市相撲館「けはや座」・當麻蹶速塚

Webサイト

https://www.city.katsuragi.nara.jp/index.cfm/14,0,41,html

住所

奈良県葛城市當麻83番地1 電話0745-48-4611

アクセス

近鉄南大阪線当麻寺駅下車、西へ徒歩5分(約350メートル)

情報

・開館時間 10:00~17:00(ただし2020年6月以降当面の間は16:00まで)
・休館日 祝日を除く火・水曜日、12月28日から翌年1月4日
・新型コロナウイルス感染防止対応により、一部利用休止サービスあり

當麻寺

Webサイト

http://www.taimadera.org/

住所

葛城市當麻1263

アクセス

近鉄南大阪線当麻寺駅下車、西へ徒歩15分(約1キロメートル)

情報

※葛城市の「葛」の字について
http://www.city.katsuragi.nara.jp/index.cfm/1,4579,2,html 

※2020年08月現在の情報です。

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