智恵を授かる 安倍文殊院のお会式

合格祈願の絵馬であふれる安倍文殊院本堂

智恵を授かる 安倍文殊院のお会式

安倍氏一族の氏寺として645年に創建

JRと近鉄が隣接する桜井駅の南口から伸びる並木通りを南下し、国道165号線を越えると、日本三文殊第一霊場として知られる「安倍文殊院」のある小高い丘が右手に見えてきます。南へ下れば飛鳥や多武峰、西へ進めば藤原京へとつながるこの地を本拠としていたのが、遣唐使として海を渡った阿倍仲麻呂や、陰陽師(おんみょうじ)として活躍した安倍晴明を輩出した安倍氏一族です。645年に文殊院にほど近い南西の平地に創建された安倍寺は、金堂や塔、回廊などを持つ立派な伽藍でしたが、兵火などにより廃絶し、今ではその一部が「国史跡 安倍寺跡」に指定され公園になっています。

日本最大の文殊菩薩から知恵を授かる

文殊菩薩の智恵袋を頭に当てるお加持祈祷

文殊菩薩の智恵袋を頭に当てるお加持祈祷

安倍文殊院のご本尊である文殊菩薩は、総高7メートル日本最大の文殊さまです。知恵をつかさどる仏にふさわしい均整の取れた毅然とした像は、運慶と並んで鎌倉時代を代表する仏師快慶の作。像内の墨書には、東大寺を復興した名僧重源(ちょうげん)の銘もあり、この像が大仏殿再興とかかわって造立されたことがわかります。それらの歴史的事実が判明し、文殊菩薩に善財童子などの脇侍像などをあわせた「渡海(とかい)文殊菩薩群像」が国の重要文化財から国宝に格上げされたのは2013年のこと。この場合の「渡海」は、仏教の教えを広めるために獅子に乗り雲海を飛び回る姿を表しているのだそうです。智恵は学問のみならず厄や災難を払うためにも必要だとの考えから、近年は受験シーズンだけでなく、一年を通して多くの人が厄除け祈願に訪れます。

この日本最大で国宝の文殊さまから直接智恵を授けていただける春の大祭が、「文殊お会式(えしき)」です。3月25日と26日には、大般若経転読大法要のほか、文殊菩薩の智恵袋を頭に当てるお加持祈祷や、ご祈祷をしたもち米でつくった「智恵のもち」が本堂の舞台から撒かれ、境内は多くの人でにぎわいます。

安倍晴明にちなんだ「七まいり」

文殊池に浮かぶ金閣浮御堂

文殊池に浮かぶ金閣浮御堂

本堂斜め前の文殊池にあるのが、金閣浮御堂です。この池は、第二次世界大戦中に水不足になった近隣の村民に請われるかたちで掘ったそうですが、その場所に長年の悲願であった御堂を建立したのは1985年のことです。堂内は霊宝館となっており、弁財天のほか阿倍仲麻呂や安倍晴明に関する宝物が季節ごとに展示されています。また、陰陽道に通じ日本の占いの祖とされる安倍晴明にちなんだ「七まいり」は、お堂の回廊を7回まわりながら7枚の札を収めると難が取り除かれるといわれています。

「七まいり」のおさめ札と授与品の肌まもり

「七まいり」のおさめ札と授与品の肌まもり

特別史跡 文殊院西古墳

文殊院西古墳の玄室

文殊院西古墳の玄室

それほど広いとは言えない安倍文殊院の境内には、ほかにもさまざまな見どころがあります。そのひとつが「特別史跡 文殊院西古墳」です。特別史跡の指定を受けている古墳は全国で7件。そのうちの5件が、文殊院西古墳をはじめ、石舞台古墳や高松塚古墳、キトラ古墳など奈良県にあります。花崗岩を加工したダイナミックな側壁や、約15平方メートルもの巨大な一枚岩の天井石は圧巻です。

内部は645年頃築造された当時のまま保存されている

内部は645年頃築造された当時のまま保存されている

白山堂と干支ジャンボ花絵

安倍晴明とゆかりのある白山神社(石川県)末社として文殊院境内にあるのが、「白山堂」です。祭神は縁結びの神様として知られ、種々の良縁を求める人たちが参拝します。小ぶりで繊細な造りの社殿は、室町時代に建てられた国の重要文化財です。

境内にある「白山堂」は室町時代の建立

境内にある「白山堂」は室町時代の建立

近年11月になると報道されるのが、翌年の干支をパンジーで表した「干支ジャンボ花絵」です。白山堂横の石段をのぼったところにある展望台からは、ジャンボ花絵はもちろん、耳成山や遠く二上山まで見渡すことができ、この地が古代において重要な場所であったことがよくわかります。

1400年近い歴史の中で、兵火や神仏分離、それに続く廃仏毀釈など、安倍文殊院は幾多の困難を経てきました。すぐ北の桜井公園には、安倍山城跡や、芸能発祥の地と伝わる聖徳太子ゆかりの「土舞台(つちぶたい)」なども点在しています。今は住宅地になってしまったり、遺跡しか残っていない場所も多いからこそ、文殊さまから授かった智恵と想像力を存分にはたらかせ、古代の歴史散歩をしてみるのも楽しいかもしれません。

毎年11月に来年の干支にちなんでつくられるジャンボ花絵は翌4月頃まで楽しめる

毎年11月に来年の干支にちなんでつくられるジャンボ花絵は翌4月頃まで楽しめる

登大路ホテル奈良からのアクセス

安倍文殊院

Webサイト

http://yamatoji.nara-kankou.or.jp/01shaji/02tera/03east_area/abemonjuin/

住所

桜井市阿部645 電話0744-43-0002

アクセス

・近鉄・JR桜井駅南口から西南に2km弱
・駅の北口南口ともにタクシーのりば有
・駐車場300台

情報

・受付時間9:00~17:00(年中無休)
・安倍文殊院 文殊お会式(春の大祭)
 毎年3月25日、26日

※2018年12月現在の情報です。

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