佐保川の桜

大宮橋付近から佐保川の桜の奥に若草山を望む

佐保川の桜

5キロにわたって続く桜並木

奈良の桜の名所といえば、「一目千本」とうたわれる吉野山を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。シロヤマザクラを中心とした3万本ともいわれる桜が、下千本、中千本、上千本、奥千本と呼ばれる地帯を順に染め上げてゆく光景は、古代から現代まで多くの人々に愛されてきました。

ですが、登大路ホテル奈良のすぐ近くにも、たくさんの桜の名所があります。奈良公園では、その広大な敷地のそこかしこに、ヒガンザクラやヤマザクラ、ソメイヨシノやシダレザクラなど、種類の豊富な桜を楽しむことができます。若草山へむかう途中の「茶山園地」付近には、「県花」でもある遅咲きのナラノヤエザクラが多く見られる穴場もあり、東大寺二月堂から見下ろす景色は、桜の色で華やいで見えます。

今回、桜の季節はもちろん、通年の散策コースとしてもおすすめしたいのが、和歌の題材としてもたびたび歌われてきた「佐保川」です。約5キロメートルにもわたって続く桜並木は、豪華でありながら、観光地とは少し違った普段着の奈良を楽しめるエリアのひとつです。

幕末の奈良奉行が植えた桜

猿沢池に続く五十二段横にある「植桜楓之碑」

猿沢池に続く五十二段横にある「植桜楓之碑」

佐保川の桜をご紹介する前に、登大路ホテル奈良から興福寺五重塔を抜け、猿沢池へ続く大階段「五十二段」のすぐ脇に、石柵で厳重に囲まれ、今では「植桜楓之碑」の題字がかろうじて読み取れるばかりの石碑があるのをご存知でしょうか。

これは、幕末の奈良奉行、川路聖謨(かわじとしあきら 1801~1868)が、桜と楓の苗木数千本を植えたことを記念し、1850年に自ら建てた記念碑です。聖謨は1846年3月に赴任してきた際、奈良の桜が思いのほか枯れていたことを日記に残しています。気さくな人柄で親しまれたという聖謨は、5年半の任期中に多くの改革に手腕を発揮し、住民のくらしむきに心を砕いてきた名奉行である一方、風雅を愛する文人でもありました。植樹に際しては、奈良の住民にも呼び掛けるとともに自ら率先して寄付し、多くの人の賛同を得たといいます。古代から受け継いだ景観は、手入れを続けてこそ美しさを保つことができる。石碑には、後世の人たちもそのことを忘れないでほしいということが書かれています。苗木を植えた範囲は、興福寺や東大寺を中心に、南は百毫寺、西は佐保川の堤にも及んだといいます。

満開の「川路桜」

満開の「川路桜」

佐保川と交差するJR関西本線の踏切近くには、樹齢160年ともいわれる「川路桜」と呼ばれる大木が現在も数本残り、川に向かってあふれるように花を咲かせます。川路聖謨の思いを受け継いで、今や1000本を超える桜の堤は、四季を通じて市民の憩いの場となっています。

周辺自治会によって灯される行灯と夜桜

周辺自治会によって灯される行灯と夜桜

関西本線と交差するあたりは撮影スポットのひとつ

関西本線と交差するあたりは撮影スポットのひとつ

万葉集にも多く読まれた佐保川

春日山原生林に源流を持つ佐保川。東大寺の北から聖武天皇陵の前を横切り、奈良女子大学、奈良県立大学の北、東から西へと流れます。そして近鉄奈良線と交差する付近からは南へと流れを変え、大和郡山市を通り、大和川へ合流します。

万葉集に好んで詠まれた佐保川とは、聖武天皇陵から新大宮周辺までを指すのではないかと考えられています。このあたりは、「佐保の内(うち)」と呼ばれ、万葉集を編纂したと言われる大伴家持や、光明皇后の父である藤原不比等、そして天武天皇の孫にあたる長屋王の邸宅などが並んでいました。現在、県立大学の北東にある「下長慶橋(しもちょうけいばし)」から、新大宮駅の北に位置する「大宮橋」まで、1キロメートルほどの佐保川の両岸には、万葉の歌碑が点在します。

護岸も整備され、古代とは姿を変えてしまった佐保川ですが、千鳥が鳴く川沿いにくらし、多くの歌を詠んだ天平貴族たちに思いを巡らせて歩いてみるのも、奈良ならではの楽しみです。

下長慶橋の北にある大仏鉄道記念公園のしだれ桜

下長慶橋の北にある大仏鉄道記念公園のしだれ桜

隠れた桜の名所、鴻ノ池運動公園

毎年12月、奈良マラソンのスタートゴール地点としてにぎわう鴻ノ池運動公園(奈良電力鴻ノ池パーク)。観光地ではありませんが、野球場や武道館、テニスコートのほか、相撲の土俵や弓道場まで整う30万平方メートルの広大な総合運動公園です。周辺は奈良時代の陵墓が多く確認される丘陵地で、地形を生かして植えられた桜の満開時には、全方位を桜に包まれたような贅沢な空間になります。

公園の南端、池のほとりの武道場の横には、1976年に「川路聖謨先生顕彰碑」が建てられ、1キロメートルほど先に今も残る佐保川の「川路桜」を、しずかに見守っています。

鴻ノ池運動公園の桜も見事

鴻ノ池運動公園の桜も見事

昨年、桜の苗木が新たに植樹された「川路聖謨先生顕彰碑」

昨年、桜の苗木が新たに植樹された「川路聖謨先生顕彰碑」

登大路ホテル奈良からのアクセス

下長慶橋(佐保川の桜並木の東端)

住所

奈良市法蓮町

アクセス

ホテル前の国道369号線を西へ800メートル、国道の北へ伸びる「船橋商店街」を600メートル直進

大宮橋(佐保川の桜と若草山が同時に楽しめる)

住所

奈良市法蓮町と芝辻町3丁目の境界

アクセス

近鉄奈良線 新大宮駅より北へ300メートル

鴻ノ池運動公園(奈良電力鴻ノ池パーク)

Webサイト

https://yamatoji.nara-kankou.or.jp/02nature/07park/01north_area/konoikeundokoen/

住所

奈良市法蓮佐保山4-5-1 電話0742-22-0001

アクセス

・登大路ホテル奈良から北へ約2キロメートル
・近鉄奈良駅から奈良交通バス「鴻池」または「市営球場」下車 徒歩約5分

情報

駐車場500台(無料)

※2019年03月現在の情報です。

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