真夏の大松明 東坊城のホーランヤ

毎年8月15日に行われる橿原市東坊城町の火祭り「ホーランヤ」

真夏の大松明 東坊城のホーランヤ

巨大松明の豪快な火祭り

畝傍山の西へ2キロ足らずの場所に位置する橿原市東坊城(ひがしぼうじょう)町。室町時代から今に残る古い地名であるこの地で、毎年8月15日に行われる豪快な火祭りが、「東坊城のホーランヤ」です。奈良県無形民俗文化財に指定されているこの伝統行事には、圧倒的な大きさでありながら、丸みをもったフォルムにどこか愛らしさが感じられる大松明が登場します。

数百年前から続くといわれるホーランヤですが、その由来は実はよく分かっていません。災厄をもたらす悪鬼を祓うために大きな火を起こすとか、お盆の「送り火」が巨大化したものではないかという説もあります。「ホーランヤ」という変わった名前の意味も伝わっていません。島根県松江で10年に一度行われる一大船祭りは、「ホーランエンヤ」というよく似た名前で呼ばれています。このお祭りの名前の由来が掛け声によるものといわれることから、東坊城のホーランヤももしかすると、松明を担ぐときの掛け声に関係しているのかもしれません。けれど、現在の掛け声とはずいぶん違い、その由来はなぞに包まれたままです。

農村に伝わる松明の材料

巨大な「大松明」と、小ぶりの「役松明(やくたいまつ)」は、祭りに参加する地区ごとに1つずつ作られます。半分に割った青竹をすだれ状に編み、その中に麦ワラ、菜種ガラ、笹竹などをきれいに詰め込んで巻き、ワラ縄で3~5か所しっかりと縛る作業は大変な労力です。火をつける芯の部分は最後に丸く整え、割竹のまわりには御幣を付けます。「エビ」と呼ばれている注連縄は、宮入りしたあと取り付けます。

大きいもので500キロ近くもある大松明。上部にあるのが「エビ」と呼ばれる注連縄。

大きいもので500キロ近くもある大松明。上部にあるのが「エビ」と呼ばれる注連縄。

役松明は拝殿前に奉納される。大人が一人で担ぐにはずっしり重い。

役松明は拝殿前に奉納される。大人が一人で担ぐにはずっしり重い。

米との二毛作でちょうどこの時期収穫が終わっている麦、灯芯に欠かせない油を取る菜種など、松明の材料は、かつての農村では身近に手に入るものばかりでした。人手も多く、材料も潤沢だった昔の松明は、もっと大きかったとのこと。田畑や山林の宅地化で入手が困難になった現在では、この祭りのために小麦と菜種を作っているそうです。

2つの神社に順に奉納

東坊城町内には、大和川に注ぎ込む曽我川を挟んだ500メートルほどの範囲内に、春日神社と八幡神社という2つの神社があります。ホーランヤは、東坊城町と隣の古川町の各地区にいる2社の氏子を中心として行われています。

8月15日、まず13時頃に、曽我川の東にある春日神社で祭礼が行われ、次に15時頃に、駅からすぐの八幡神社で同じように祭礼が行われます。「大松明」は、大きいもので高さ3メートル、直径1.5メートル、重さは500キロ近くにもなり、「オーコ」と呼ばれる2本の天秤棒を使って数十人で運びます。大松明と並べると小さく見える「役松明(やくたいまつ)」も、大人1人で担ぐとその大きさに驚くほど、ずっしり重いものです。町内を巡回しながら決まった順番で宮入し、祈祷を受けて神事を終えたあと、いよいよ豪快な火祭りがはじまります。

火付け松明で大松明に点火すると、乾いた音を伴いながら一気に炎がひろがる。

火付け松明で大松明に点火すると、乾いた音を伴いながら一気に炎がひろがる。

大松明はまず、火を点けないままで境内を1周したあと、別に用意した火付け松明から火をもらいます。パチパチという乾いた音を伴いながら、大松明に一気に火がまわります。浴衣姿で頭に手ぬぐいを巻いた担ぎ手たちは、さらに2周境内をまわります。炎天下のなか、松明の火はメリメリとすごい音を立てて燃えてゆきます。松明が近づいてくると、炎の熱や燃えガラ、燻すような煙に観客は後じさりしながらも、生き物のようにかたちを変える松明の炎や、滝のような汗を流して懸命に練り歩く担ぎ手たちを、食い入るように見つめています。

順番に境内をまわる大松明。向きを制御するため、四方から青竹で押さえて進む。

順番に境内をまわる大松明。向きを制御するため、四方から青竹で押さえて進む。

境内を合計3周すると松明は下ろされ、燃え尽きるのを待つ。

境内を合計3周すると松明は下ろされ、燃え尽きるのを待つ。

祭りが終わったあとも燃え盛る、役松明(手前)と大松明(右奥)。

祭りが終わったあとも燃え盛る、役松明(手前)と大松明(右奥)。

割竹がほどけ、燃え尽きようとする大松明。

割竹がほどけ、燃え尽きようとする大松明。

無病息災を願って続ける

すべての大松明が境内をまわり終えると、氏子たちが拝殿前に集合します。菜種ガラの束に、燃え尽きようとする大松明からもらい火をし、並べられた役松明に挿して燃やします。無病息災を願って一同で手打ちをし、真夏の火祭りは終了します。

祭礼を中止した年に、火災が発生し疫病まで流行したという伝承もあるホーランヤ。祭りの意味も、名前の由来もわからなくなり、かつてのように松明の材料を簡単に用意できなくなった今も、世の中の平和と穏やかなくらしを願う人々の気持ちが、年に一度の大祭を支えています。

登大路ホテル奈良からのアクセス

春日神社

Webサイト

https://yamatoji.nara-kankou.or.jp/01shaji/01jinja/03east_area/kasugajinja-kashihara/access/

住所

橿原市東坊城町1029

アクセス

近鉄奈良駅から大和西大寺駅で橿原線に乗車、橿原神宮前駅で再び近鉄南大阪線に乗換え、東坊城駅で下車、北東へ徒歩約9分(約700メートル)

情報

祭礼は8月15日13:00頃~

八幡神社

Webサイト

https://yamatoji.nara-kankou.or.jp/01shaji/01jinja/03east_area/k77x2evclx/access/

住所

橿原市東坊城町857 電話0744-22-4960

アクセス

近鉄奈良駅から大和西大寺駅で橿原線に乗車、橿原神宮前駅で再び近鉄南大阪線に乗換え、東坊城駅で下車、南東へ徒歩約3分(約200メートル)

情報

祭礼は8月15日15:00頃~

※2019年07月現在の情報です。

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