ぬばたまの純正奈良漬 今西本店

つややかに黒光りする今西本店の「純正奈良漬」

ぬばたまの純正奈良漬 今西本店

奈良漬の概念を変える唯一無二の味

奈良市内の目抜き通り三条通。多くの人たちが行き交うこの通りに、「奈良漬 元祖製造元」の看板を掲げる今西本店があります。今西家のルーツは古代にさかのぼるため創業は不詳ですが、この場所に出店を構えた江戸末期を開店として、現在5代目の今西泰宏氏が伝統の味を守っています。普段目にすることの多いあめ色の奈良漬とは一線を画す、黒くつややかな奈良漬には、「純正奈良漬」の名にふさわしい唯一無二の滋味が詰まっています。

店舗は江戸初期に建てられた一乗院の別邸を利用。細長い敷地の奥に工場と保存倉庫を持つ。

店舗は江戸初期に建てられた一乗院の別邸を利用。細長い敷地の奥に工場と保存倉庫を持つ。

最長19年、漬物の王様

奈良漬の起こりは、1300年前の奈良時代といわれます。平城宮に近い長屋王邸付近からは「可須津毛瓜(かすづけうり)」と書かれた木管も出土しており、濁り酒の沈殿物(粕)に塩漬け野菜を数日漬けたものが食べられていたようです。「奈良漬」の名前は15世紀の文献にはすでに見え、以降も豊臣秀吉や徳川家康といった天下人が好んで食しました。惜しみない手間ひまがかけられていることから、「漬物の王様」と呼ばれることもあります。

今西本店の奈良漬の原材料は、塩漬された国産野菜と清酒粕、これだけです。添加物やみりん粕、海外の野菜を使った促成技法の奈良漬が流通する現代の流れに逆行するかのように、今西本店が原材料にこだわるのには理由があります。それは、原材料とそれにかける時間が、奈良漬の味を決めるからです。漬け込んだ野菜が店頭に並ぶまで、今西本店では短いもので4年、最長で19年の歳月がかかります。野菜は徳島や和歌山など国内の契約農家から随時、酒粕は奈良漬に最も適した硬めのものを灘から毎年春に仕入れ、細かくばらして踏み込み、半年以上熟成させてから使います。以降、「下漬け」「中漬け」「本漬け」「仕上げ」「極上仕上げ」「極上再仕上げ」と、踏み込んだ粕に野菜を漬け、取り除いては漬け替えるという作業を6回以上行い、くりかえし塩分と水分を抜くことで、独特の風味に到達します。

4回目の漬け替え「仕上げ」のために、半年前に漬けた酒粕を丁寧に取り除く

4回目の漬け替え「仕上げ」のために、半年前に漬けた酒粕を丁寧に取り除く

この段階で最初の「下漬け」から2年が経過。店頭に並ぶのはさらに2年後

この段階で最初の「下漬け」から2年が経過。店頭に並ぶのはさらに2年後

現代人の味覚に問いかける自然の味

現在、今西本店の奈良漬は、うり、きゅうり、一口茄子と桔梗茄子、スイカ、守口大根、瓢箪、そして生姜の8種類。皮がやわらかいうちに素早く収穫しなければならない瓢箪は育てる農家が激減し、酒粕の高騰など原材料の調達には苦労が絶えません。「黒」にかかる枕詞(まくらことば)「ぬばたまの」がぴったりなほど黒光りする奈良漬は、初めてこれを見る人にとっては驚きです。そのあまりの黒さに、時にはクレームを受けることもあると泰宏氏は苦笑します。

純正奈良漬は、酒粕に漬けておけば40度近い高温の中でも2年は持つ

純正奈良漬は、酒粕に漬けておけば40度近い高温の中でも2年は持つ

「5回、6回食べてやっとわかった。突き抜けたという方もいらっしゃいます。添加物に慣れた現代人には、100%自然のものはすぐにわからない味かもしれません。初めての方にはまずうりときゅうり、その後でスイカをお勧めします。純正奈良漬の醍醐味をしっかりと味わうためには、薄くしすぎず、うりときゅうりが3~4ミリ、スイカは4~5ミリ程度に。何年も漬け替えることで塩分と水分はほとんど抜けていますが、切り立ての奈良漬は味が鋭くなっています。お皿に並べてラップをして、4、5日冷蔵庫内に置いてから食べてみてください。自然の甘みがあります」と泰宏氏。スイカを最初に食べてはいけない理由は、スイカが美味しすぎるからとのこと。サクサクしながらもしっとりとした独特の食感は、上質な和菓子のようでもあります。

切ったあとから酒粕のエキスがじわりとしみ出す。噛んだときの音、食感、味、それぞれの違いを楽しめる。

切ったあとから酒粕のエキスがじわりとしみ出す。噛んだときの音、食感、味、それぞれの違いを楽しめる。

2002年の冬に完成した保存倉庫には、現在2200余りの樽がずらりと並んでいます。どこに何があるのかはコンピューターで管理していますが、温度管理は昔ながらの方法です。

2200樽余が並ぶ保存倉庫は圧巻。コンピューターで管理するのは位置のみで、四季の変化を利用して熟成させる。

2200樽余が並ぶ保存倉庫は圧巻。コンピューターで管理するのは位置のみで、四季の変化を利用して熟成させる。

「冬は寒くて夏は暑いし、上は暑くて下は寒い。冬は発酵母菌の動きがほとんど止まり、春になるとまた活動する。夏にはさらに活発になります。樽の場所は日本の四季に合わせて変えます。下漬けや中漬けの樽は上の方に、仕上げ以降の樽は下の方に、年単位でこれを繰り返すことで、味に奥行きと幅が出ます」

日本で最後の一軒を守る

誇りを持って本物の味を守り続ける今西本店5代目今西泰宏氏

誇りを持って本物の味を守り続ける今西本店5代目今西泰宏氏

小学生の頃から家業を手伝い、大学生になっても休みには帰省し、漬け込み作業をしたという泰宏氏。大学時代には舞台監督として活躍、卒業後も東京の百貨店の劇場で約3年勤め、一時は演劇との両立を考えた時期もありました。

「うちの商売は正直割に合いません。本当に大変な労力がかかります。秘訣と聞かれてもお見せしたことをしているだけです。ただ、この手間をかけるところがもうありません。うちがやめたら、この味がなくなってしまいます」という言葉には、奈良漬を選んだ覚悟と愛情、そして何より丹精込めて作る自社の奈良漬への自信が満ちあふれています。

和洋を問わず料理を引き立たせる奈良漬

小さな袋物から大きな樽まで豊富な種類の奈良漬が並ぶ店内

小さな袋物から大きな樽まで豊富な種類の奈良漬が並ぶ店内

店内には単品から木樽詰合せまで、さまざまなタイプの純正奈良漬が並びます。ベーシックな食べ方の他にも、クラッカーやチーズに乗せたり、ピザやチャーハンに振りかけたり、トーストや巻き寿司の具材にも合うそうです。

酒粕は、食べ終わったら捨てずに、さわら、塩鮭、豚肉などの上下に塗って寝かせます。肉と魚に使う粕は分けて、1~2回目は冷蔵庫に一晩、3~4回目で二晩漬け、うまくすると5~6回使えます。ゆで卵やチーズは長めに漬けると絶品に。焼きおにぎりにつけたり、お味噌汁に少し入れるとコクが出ます。本物の奈良漬だからこそ、お料理に精彩を与える楽しみ方は無限大です。

小西通りにあるmellow cafeでは、今西本店の純正奈良漬を使ったピザやチーズの盛り合わせが楽しめる

小西通りにあるmellow cafeでは、今西本店の純正奈良漬を使ったピザやチーズの盛り合わせが楽しめる

登大路ホテル奈良からのアクセス

今西本店

Webサイト

http://xn--nts622cwtn.com/

住所

奈良市上三条町31番地 電話0742-22-2415 FAX 0742-22-2416

アクセス

近鉄奈良駅前の小西さくら通りを南下して三条通りを西へ約6分(約550メートル)

情報

・開店時間 9:30~18:45(日曜・祝日は18:00まで)
・水曜及び第3日曜日休み

mellow cafe

Webサイト

http://www.mellowcafe.jp/

住所

奈良市小西町1-8 axe unit 1F 電話・FAX 0742-27-9099

アクセス

近鉄奈良駅前の小西さくら通り中程、約4分(約400メートル)

情報

・開店時間 11:00~23:30(ラストオーダー23:00)
・不定休

※2019年09月現在の情報です。

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