南市の初えびす 奈良町のお正月

南市恵毘須神社の宵えびす

南市の初えびす 奈良町のお正月

めずらしい一月五日の「初えびす」

三箇日の賑わいもさめやらぬ1月4日と5日に、奈良町の路地にある小さなお社「南市(みなみいち)恵毘須神社」では「初えびす」が行われます。商いの神様といわれる「えびす様」に招福や商売繁盛を祈り、笹の枝先に縁起物をつけて持ち帰る祭りは関西より西によく見られます。「十日戎」などと呼ばれるとおり、多くは1月10日を中心に行われるのですが、南市の初えびすは「五日戎」とも呼ばれ、一般的なお祭りより早い理由はなぜでしょうか。

「南市」の由来

中央に「エビス社」「ミナミ市丁(南市町)」の文字が見える。奈良細見図(1889年)より 国立国会図書館蔵

中央に「エビス社」「ミナミ市丁(南市町)」の文字が見える。奈良細見図(1889年)より 国立国会図書館蔵

8世紀後半に都が奈良から京都へ遷ったあとも、有力社寺のまわりには多くの人が集まり、寺院などが統制する「郷(ごう)」と呼ばれる町が形成されました。大きく7つに分かれるこれらの郷は「南都七郷」と呼ばれて商工業も盛んになり、鎌倉時代中頃の13世紀後半には「北市」「南市」「中市(高天市)」と3つの市場が設けられました。その後、市場の守護神として恵毘須神社が南市に勧請され、「初市」と同じ正月5日に「初えびす」が行われるようになったようです。

祭事のあるときのみ開かれている南市恵毘須神社

祭事のあるときのみ開かれている南市恵毘須神社

15世紀初めの記録によると、南市に出店していたのは31種類の「座」で、米や塩、野菜やこんにゃく、魚、鳥、果物などの食料品だけでなく、絹や麻布、烏帽子などの衣料品、ろくろ細工や鍋などの加工品、炭や松などの燃料品など、ありとあらゆるものが並んでいたのだとか。南蛮貿易で栄えた堺に抜かれるまで、奈良は京都についで日本第二の都市でした。16世紀初めの人口は2万5千人に達し、18世紀前半に書かれた奈良の郷土史『奈良坊目拙解』には、戦国時代の連歌師、里村紹巴(さとむら・じょうは)も、ここ南市に住んでいたと記されています。

町の人たちに愛される「えびすさん」

南市恵毘須神社の「宵えびす」は1月4日の夕方から。西隣にある「餅飯殿(もちいどの)センター街」には幟が立ち、多いときには参拝に訪れた人たちの行列が商店街にまで伸びていることもあります。700年以上にわたって町の人たちを見守ってきた神社は、現在春日大社の末社として祀られており、「事代主命(ことしろぬしのみこと)」(えびす様)が御祭神です。南市町の人たちによって用意された吉兆笹に春日大社の神職によって御祈祷された御守りや縁起物を結びつけてもらい、奈良の人たちは今年一年の商売繁盛や家内安全を願って家路につきます。

翌5日の「本えびす」は朝7時から。宵えびすは数時間で終わってしまうので、宿泊予定のある人は朝にお参りしてみてはいかがでしょうか。この季節の日の出は7時過ぎ。北東へ歩いて数分の猿沢池に、朝の光がさしこむ頃です。

普段はひっそりとした南市町の路地に長い行列ができる

普段はひっそりとした南市町の路地に長い行列ができる

福娘から授与される吉兆笹は、南市町の人たちによって作られたもの

福娘から授与される吉兆笹は、南市町の人たちによって作られたもの

「餅飯殿(もちいどの)センター街」のすぐ東にあたる南市町には昔の風情が残る

「餅飯殿(もちいどの)センター街」のすぐ東にあたる南市町には昔の風情が残る

十日には「春日の十日えびす」

南市恵毘須神社の本社である世界遺産 春日大社では、1月10日の10時から15時頃まで「春日の十日えびす」が行われます。場所は御本殿前の南門からずらりと燈籠の並ぶ御間道(おあいみち)を道なりに進み、若宮神社の南側に鎮座する「佐良気(さらけ)神社」です。「若宮十五社」の一つである佐良気神社の御祭神「蛭子神(ひるこのかみ)」もまた、えびす様のこと。福娘が福を授けるために振る鈴の音が、春日の杜にかろやかに響きます。

春日大社若宮十五社のひとつ「佐良気神社」

春日大社若宮十五社のひとつ「佐良気神社」

縁起物とともに福娘が鈴を鳴らして福を授けてくれる

縁起物とともに福娘が鈴を鳴らして福を授けてくれる

登大路ホテル奈良からのアクセス

南市恵毘須神社

Webサイト

https://narashikanko.or.jp/event/%e5%8d%97%e5%b8%82%e3%81%ae%e5%88%9d%e6%88%8e%ef%bc%8f%e6%81%b5%e6%af%94%e5%af%bf%e7%a5%9e%e7%a4%be/

住所

奈良市南市町28 電話 0742-22-7788(春日大社)

アクセス

東向商店街を南下し、餅飯殿センター街中程の「もちいどのCUBE」を東に折れ、2つめの筋を北へ。徒歩約8分(約650メートル)

情報

・「宵えびす」 1月4日17:00~
・「本えびす」 1月5日7:00~

佐良気神社(春日大社境内)

Webサイト

http://www.kasugataisha.or.jp/calendar/winter01.html

住所

奈良市春日野町160 電話 0742-22-7788

アクセス

・登大路ホテルから東南に徒歩約27分(約2.2キロメートル)
・近鉄奈良駅から奈良交通バスで「春日大社表参道」または「春日大社本殿前」下車
・佐良気神社は春日大社御本殿から南に徒歩約2分(約200メートル)

情報

「春日の十日えびす」 1月10日10:00~15:00頃

※2019年11月現在の情報です。

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