歴史のなかにくらす 橿原市今井町

くらしと共にある今井町の歴史的景観

歴史のなかにくらす 橿原市今井町

「大和の金は今井に七分」

近鉄八木西口駅を南西へ進み、飛鳥川に架かる朱塗りの蘇武橋(そぶばし)を渡ると、樹齢430年を超えるエノキの大木の奥に、漆喰壁と瓦屋根が美しい「今井町(いまいちょう)」の町並みが目に入ります。かつて「大和の金は今井に七分」(奈良の財産の七割は今井に集まっている)とうたわれた橿原(かしはら)市今井町のほぼすべては、伝統的建造物群保存地区のうち特に価値が高い「重要伝統的建造物群保存地区」に選定されています。大和三山のひとつ畝傍山(うねびやま)に近い東西600メートル南北350メートルの旧環濠内には、今もおよそ500軒の町家が連なり、多くの人々がこの町で生活しています。日々のくらしと歴史的な景観が広域に共存している稀有な町、それが今井町です。

1903年に教育博物館として建てられた「今井まちなみ交流センター 華甍」

1903年に教育博物館として建てられた「今井まちなみ交流センター 華甍」

古くは興福寺の荘園であったこの地に、石山本願寺の家衆今井兵部が一向宗の道場をつくったのは16世紀のこと。のちに称念寺となるこの道場を中心に、天文年間(1532~1555年)に周囲を濠や土塁で囲んだ「寺内(じない)町」が出来たと考えられています。ほぼ同じ頃、一向宗は台頭してきた織田信長と敵対、1575年に今井町も兵を挙げて信長と対峙しますが、半年に及ぶ攻防の末に堺の茶人津田宗及や明智光秀の仲介もあり、武装放棄を選びます。その後今井町は自治特権を許され、商工業都市として発展を遂げました。特に同じ自治都市として発展した堺との交流が深く、「海の堺、陸の今井」と呼ばれ、茶の湯などの文化も盛んになりました。

今井町の歴史や町割り、独自の紙幣「今井札(いまいさつ)」などの資料や映像は、「今井まちなみ交流センター 華甍(はないらか)」で見ることができます。各種マップや冊子なども置いてあり、まち歩きの最初に訪れてみるのがおすすめです。

展示コーナーや映像シアター、図書閲覧室が揃う「華甍」

展示コーナーや映像シアター、図書閲覧室が揃う「華甍」

「今井札」と呼ばれる独自の紙幣が流通するほど商業都市として栄えた

「今井札」と呼ばれる独自の紙幣が流通するほど商業都市として栄えた

今井町最古の今西家住宅

「八つ棟造り」と呼ばれる城郭のような構造を持つ今西家住宅

「八つ棟造り」と呼ばれる城郭のような構造を持つ今西家住宅

現在、国の指定重要文化財9件、県の指定重要文化財3件をはじめ、17世紀から20世紀まで多様な歴史的景観が残る今井町。なかでも最古の建造物が、慶安3年(1650)の棟札があり城郭のような外観を持つ「今西家住宅」です。元の名字は川井でしたが、大坂夏の陣の際、豊臣方の攻撃を今井町西口において守ったことから、徳川家康に「今西」を名乗るように勧められ名字を改め、代々の惣年寄筆頭として司法行政の一部を担いました。おどろくほど広い「土間」は、町内のもめごとを裁く「お白州」としても使われた公共の場。柱を使わず大梁3本を組み上げたその技術を学びに、建築を志す国内外の学生が現在も訪れるそうです。

一番奥のナンドは主人の部屋、土間から4段高くなっている

一番奥のナンドは主人の部屋、土間から4段高くなっている

3本の大梁がある豪壮な小屋組と、入口上部の「いぶし牢」は必見(要事前予約)

3本の大梁がある豪壮な小屋組と、入口上部の「いぶし牢」は必見(要事前予約)

紙半豊田記念館

今西家住宅から東南へすぐ、橿原市の景観重要樹木第2号のカイヅカイブキを目印に進むと「紙半豊田記念館」があります。ここは大和綿などを商い、両替商としても財をなした豊田本家の歴代当主が収集、愛用した4000余点の展示品を収蔵する資料館です。古伊万里などの美術コレクションだけでなく、当時の生活用具や嫁入り道具、四国遍路など旅の折々に綴った記録など、江戸時代の今井の豪商のくらしぶりが伺えます。向かいにある豊田本家本宅の内部も一部見学することができます。

樹齢250年以上のカイヅカイブキが美しい「紙半豊田記念館」

樹齢250年以上のカイヅカイブキが美しい「紙半豊田記念館」

歴代当主のコレクションや生活用具を定期的に入れ替えて展示

歴代当主のコレクションや生活用具を定期的に入れ替えて展示

迷いながら歩くたのしみ

「旧米谷家住宅」(見学自由)がある中町筋の家々、虫籠窓のデザインを見ているだけでも飽きない

「旧米谷家住宅」(見学自由)がある中町筋の家々、虫籠窓のデザインを見ているだけでも飽きない

豊臣秀吉の文禄検地(1561年)頃には、現在とほぼ同じ町割りが完成していた今井町。現在本堂修復中の称念寺の前から北へ順に、御堂筋、本町筋、中町筋、大工町筋など、東西の道に名前がついています。濠にかつてあった9つの門には門番がおり、敵の侵入に備えて道路の多くは見通しがきかないように屈折させたそうです。

時代劇のロケにもよく使われる風情のある町並みに、標識はあまりありません。今井町の人たちは、「少し迷いながら歩く方が、たのしいですよ」と言います。細い道を歩いていると、刻々と変わる太陽の高さに、町の表情が少しずつ変わっていくのがわかります。

「出世男」の銘柄で知られる河合酒造も国の重要文化財

「出世男」の銘柄で知られる河合酒造も国の重要文化財

18世紀中頃に建てられた上田家住宅

18世紀中頃に建てられた上田家住宅

最近は、空き家に移住する人や、新しい喫茶店、ギャラリーなども増えてきた今井町。目的地まで最短距離で駆け足でまわるのではなく、人々が普段のくらしの中で大切に守り継いできた町並みを、ゆったりと楽しんで歩いてみてはいかがでしょうか。

町の歴史をより深く知りたいときは、地元ボランティアガイドの案内を聴きながらじっくり歩くのもいいかもしれません(末尾に問合せ先あり)。また、毎年5月には「今井町並み散歩」が開催され、町かどアートや茶席、普段非公開の民家の公開、今井町ゆかりの大茶人 今井宗久らに扮した茶行列が練り歩き、多くの人でにぎわいます。

今井町に移住し、空き家を店舗にする人も増えている

今井町に移住し、空き家を店舗にする人も増えている

自分で選んだカップでサイフォンコーヒーを楽しめる「珈琲さとう」

自分で選んだカップでサイフォンコーヒーを楽しめる「珈琲さとう」

登大路ホテル奈良からのアクセス

今井まちなみ交流センター華甍

Webサイト

https://www.city.kashihara.nara.jp/kankou/own_imai/kankou/spot/imai_hanairaka.html

住所

橿原市今井町2-3-5 電話 0744-24-8719

アクセス

・近鉄橿原線八木西口駅下車南へ徒歩約7分(約650メートル)
・駐車場あり(有料)

情報

・開館時間 9:00~17:00(入館は16:30まで)
・年末年始休館

今西家住宅

Webサイト

https://www.imanishike.or.jp/

住所

橿原市今井町3-9-25 電話 0744-25-3388

アクセス

近鉄橿原線八木西口駅下車徒歩約12分(約950メートル)

情報

・要事前予約(入館料大人500円)
・開館時間 10:00~12:00、13:00~17:00(入館は16:30まで)
・月曜休館(祝日の場合翌平日)

紙半 豊田記念館

Webサイト

https://toyota-kinenkan.com/

住所

橿原市今井町3-9-11 電話 0744-24-0348

アクセス

近鉄橿原線八木西口駅下車徒歩約12分(約950メートル)

情報

・入館料大人300円
・開館時間 10:30~16:30(入館は16:00まで)
・年末年始休館 平日は時期により変更あり

珈琲さとう

住所

橿原市今井町3-8-29 電話 0744-29-6580

アクセス

近鉄橿原線八木西口駅下車徒歩約10分(約750メートル)

情報

営業時間 10:00~17:00 水・木定休日(その他不定休あり)

橿原市観光ボランティアガイドの会(橿原市観光協会)

Webサイト

https://www.kashihara-kanko.or.jp/tabinotetsudai/volunteer.html

住所

橿原市内膳町1-6-8 橿原市観光交流センター2階 電話 0744-20-1123 FAX 0744-23-0223

アクセス

近鉄橿原線大和八木駅下車南にすぐ

情報

ガイドは3日前までに依頼(詳細はWEBサイト参照)

※2019年12月現在の情報です。

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