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【綴る奈良vol.4】薬師寺花会式

花会式の期間、造花(つくりばな)で荘厳される薬師瑠璃光如来

花会式の期間、造花(つくりばな)で荘厳される薬師瑠璃光如来  写真:野本暉房

 

創建1300年を誇る薬師寺の主要行事

 

平城宮跡の西を南北に流れる秋篠川。川の流れに沿って遊歩道を南へ進むと、「西ノ京」と呼ばれる地域のおちついた景色の先に、三重塔が見え隠れしてきます。近鉄橿原線・西ノ京駅のすぐ東に位置する薬師寺は、白鳳文化の華やかな698年に飛鳥に創建され、710年の平城遷都に伴い現在地に壮大な伽藍を築いたといわれます。古い歴史を持つ薬師寺で、とりわけ大切にされてきた年中行事が、3月25日から7日間にわたって行われる「花会式(はなえしき)」です。

「お水取り」の名で知られる東大寺二月堂修二会(しゅにえ)と同じ旧暦2月に行われ、本尊薬師如来の前で天下泰平を祈り、罪過を悔い改める「悔過(けか)」の法要であるため、正式名称を「修二会 花会式 薬師悔過法要」と言います。

 

花会式の由来

 

薬師寺の本尊は、切れ長の目に伸びやかな眉、黒光りするつややかなお姿の薬師瑠璃光如来(薬師如来)です。日光・月光菩薩の両脇侍をあわせた薬師三尊像は、白鳳時代(7世紀後半から8世紀初頭)の最高傑作といわれ、国宝に指定されています。背面から間近に見ることができる台座には、ギリシャやペルシャ、インド、そして中国の文様が刻まれています。

薬師寺の修二会が「花会式」と呼ばれるようになったのは、今から900年以上をさかのぼる1107年のこと。堀河天皇が病気になった皇后の平癒を祈願したところ、薬師如来の霊験により快癒。以来、皇后は感謝の祈りを込め、毎年修二会に美しい十種の造花(つくりばな)を奉納したことがはじまりと伝えられています。

現在、2,000本近い花づくりに取り組むのは、薬師寺にゆかりのある2家族です。花びらのひだや葉脈にいたるまで精緻に再現した造花は、数ヶ月から1年かけて毎年造られています。材料は、草木染めの和紙や鹿の尾の毛など、できるだけ天然のものを使い、同じ花でもつぼみ、咲きかけ、満開など段階を変えるなど工夫がほどこされています。3月23日に本尊のお身拭いが行われると、「壇供(だんぐ)」と呼ばれる餅や、「牛玉(ごおう)」というお札とともに、季節を先取りしたかのように咲き誇る造花が、12の瓶に盛り分けられて金堂内を荘厳します。

 

和紙の染色からはじまり、細部まで緻密につくられた造花(1)和紙の染色からはじまり、細部まで緻密につくられた造花(2)

和紙の染色からはじまり、細部まで緻密につくられた造花(つくりばな)

 

堂内にひびく渾身の声明

 

花会式の法要は、十人の練行衆(れんぎょうしゅう)によって7日間執り行われます。年ごとに選ばれる「大導師(だいどうし)」「咒師(しゅし)」「堂司(どうつかさ)」の要職が3人のほか、悔過法要の頭となる「時導師(じどうし)」は、7人の「大衆(たいしゅう)」から勤行毎に選ばれます。3月25日午後7時の「初夜(しょや)」「半夜(はんや)」を皮切りに、午前3時から「後夜(ごや)」「晨朝(じんちょう)」、午後1時から「日中(にっちゅう)」「日没(にちもつ)」の合計「六時の行法」が、結願(けちがん)の31日まで毎日続きます。

薬師寺の花会式の大きな特徴のひとつが、堂内にひびきわたる変化に富んだ声明(しょうみょう)です。音楽としても高く評価され、世界各地で公演されてきた薬師寺の声明は、声の持つ力を改めてわたしたちに教えてくれます。すべての行法が一般に公開されているのも、花会式の魅力です。寒さの残る3月の堂内で、汗を飛ばしながら「なむや~(南無薬)」と絶叫に近い時導師の祈りに先導されながら、参拝者も経本を手に祈りを献げます。「お経」は決して暗いものではなく、本来は生命力に満ちあふれたものだということを体感できるのが、薬師寺の花会式です。

 

堂内に声明が響き渡る

堂内に声明が響き渡る  写真:野本暉房

 

「初夜」の途中、異様な空気に包まれるのが「咒師(しゅし)走り」の行法です。堂内の明かりが消されると、法螺貝や太鼓、鐘の野性的なリズムに促されるように、両手に大刀を持った咒師が現れます。腰を落としながら小走りで駈け巡る咒師は、悔過法要が無事行われるように、魔を防ぐための結界をするのです。堂内は緊張感と不思議な一体感で満たされ、その空気自体が結界なのだとさえ感じられます。

 

堂内を結界する「咒師走り」

堂内を結界する「咒師走り」  写真:野本暉房

 

結願、そして鬼追い式

 

最終日の31日午後6時半からは、金堂の東側で神々を勧請する「神供(じんぐ)」が行われます。練行衆たちによって小ぶりの松明がくるくると放り投げられると歓声が沸き起こります。その後堂内に戻った練行衆たちは、最後の悔過行法を勤めます。「堂童子(どうどうし)」と呼ばれる花会式の一切を裏で支えている世話役が、練行衆たちの額に満願の証しである「牛玉宝印(ごおうほういん)」を押して、7日間に及んだ花会式は満行を迎えます(31日の満願法要のみ、入堂のための整理券が必要です。※ページ最後尾の花会式スケジュールを参照)。

午後8時半頃から、金堂前の舞台では「鬼追い式」が賑やかに行われます。松明を振り回し、柵を叩きながら豪快に暴れる五匹の鬼も、毘沙門天があらわれると最後には退治されます。

花会式がおわる頃には桜もほころびはじめ、古都奈良は本格的な春を迎えます。

 

金堂前の舞台で行われる「鬼追い式」

「金堂前の舞台で行われる「鬼追い式」  写真:野本暉房

 


 

薬師寺花会式

http://www.nara-yakushiji.com/contents/hanaesiki/index.html

 

毎年3月25日~31日

初夜・半夜 19:00~

※31日を除く毎日

後夜・晨朝 3:00~

※25日を除く毎日

日中・日没 13:00~

※25日を除く毎日

 

3月31日の結願法要

※金堂入堂には、31日午後2時半からお写経道場にて開催される法話に参加後、先着で配布される整理券が必要です。神供や鬼追い式は整理券がなくても拝観できます。

神供

18:30~

初夜

19:00~

鬼追い式

20:30~

 

※花会式の期間中は、稚児行列や献茶、献華、舞楽など日によって様々な奉納も行われます。

※白鳳時代の様式を残す薬師寺東塔は解体修理中で2020年完了予定。西塔は拝観可能です。

※スケジュールはすべて2018年2月現在のものです。

 

登大路ホテル奈良から薬師寺へのアクセス

電車の場合:

近鉄奈良駅から大和西大寺経由、西ノ京駅下車すぐ。所要時間約25分。

お車の場合:

ホテル前の国道369号線を西進、「二条大路南5丁目」を左折して県道9号線を南進、「薬師寺東口」右折すぐ。所要時間約20分。