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【綴る奈良vol.16】日本清酒発祥の地 奈良

日本清酒発祥の地 奈良

清酒発祥の地 正暦寺で行われる酒母の仕込み 写真:Photographer MIKI

 

万葉集や木簡にも記された日本のお酒

 

人類の歴史と文化の中で、重要な役割を担ってきたお酒。それぞれの国の主食を原料として、気候や風土に根差した独自のお酒が生み出されてきました。日本では遅くとも縄文時代中期に、果実だけでなくデンプンを原料としたお酒が造られていたのだとか。また、穀類や芋類などを口に入れ、よく噛んで発酵させる「口噛みの酒」は、神聖な飲み物として古代の神事で使われることがあったようです。

 

神々へ捧げられることの多かったお酒ですが、時代が下ると、一般の人々にも飲む機会が多くなってゆきます。万葉集にはお酒にまつわる歌が、また平城宮跡から出土した木簡にはお酒に関する記載が多く残されています。しかし、この時代に飲むことができたのは、今でいう「どぶろく(濁酒)」です。木簡に「清酒(すみさけ)」と書かれているものも、実際にはにごり酒の上澄みや、布で濾したものだったようです。

 

大神神社の酒まつりと杉玉

 

酒造りの神様として古くから信仰されてきたのが、三輪山をご神体とする大神(おおみわ)神社です。毎年11月14日には、新酒の醸造安全を祈る「醸造安全祈願祭(酒まつり)」が開催されます。杉を手にした巫女が舞う「うま酒みわの舞」は、杜氏(とうじ)の祖先といわれる高橋活日命(たかはしいくひのみこと)の歌を元につくられた神楽。祭典の後には、この日全国から集まった酒造家や杜氏に、酒屋の象徴として軒先に吊るされる「しるしの杉玉」が授与されます。また、境内では全国銘酒展やふるまい酒などが催されて、多くの人でにぎわいます。

 

大神神社 醸造安全祈願祭(酒まつり)の「うま酒みわの舞」 写真:Photographer MIKI

大神神社 醸造安全祈願祭(酒まつり)の「うま酒みわの舞」 写真:Photographer MIKI

 

清酒発祥の地 正暦寺

 

私たちが現在口にする「清酒(せいしゅ)」がつくられるようになったのは、これまで酒造りの中心的存在だった朝廷の力が弱まり、武家が政権を握るようになる中世頃だといわれています。寺院でつくられたお酒は「僧坊酒」と呼ばれ、特に大寺院の多い奈良で盛んでした。中でも、将軍が激賞するほどの美酒を生み出したのが、奈良市の南、天理市に近い山里にある正暦寺(しょうりゃくじ)です。現在では紅葉の名所として、ひっそりとしたたたずまいの正暦寺ですが、当時は多くの塔頭が並ぶ大寺院でした。

 

正暦寺では、麹米(こうじまい)と掛米(かけまい)の両方に白米を使う「諸白(もろはく)造り」、仕込み方法のルーツともいわれる「菩提酛(ぼだいもと)造り」、仕込みを3回に分ける「三段仕込み」、さらには腐敗を防ぐための「火入れ」など、近代醸造法の基本となる画期的な酒造技術が次々と生み出されました。

 

17世紀後半の『本朝食鑑(ほんちょうしょっかん)』には、諸国銘酒中の第一に「南都諸白」つまり奈良の清酒が記されており、奈良の酒は江戸にも数多く運ばれていました。このような背景から、正暦寺、そして奈良が「日本清酒発祥の地」と呼ばれるようになったのです。

 

復活した南都諸白

 

正暦寺の菩提酛清酒祭 写真:Photographer MIKI

正暦寺の菩提酛清酒祭 写真:Photographer MIKI

 

その後、途絶えてしまった菩提酛を復活させようと、奈良県内の酒造メーカーや奈良県工業技術センター、正暦寺などによる研究会が1996年にスタートしました。そして、正暦寺の境内から乳酸菌と酵母を採取することに成功。1998年に、室町時代の銘酒「菩提泉」を約500年ぶりに再現しました。
今では毎年1月に「菩提酛清酒祭」が行われ、研究会に所属する蔵元は、その日仕込んだ酒母(菩提酛)を蔵に持ち帰り、それぞれの蔵の個性を生かした清酒を醸造しています。

 

菩提酛清酒祭で行われる酒母の仕込み 写真:Photographer MIKI(1)菩提酛清酒祭で行われる酒母の仕込み 写真:Photographer MIKI(2)

菩提酛清酒祭で行われる酒母の仕込み 写真:Photographer MIKI

 

奈良には、再現された菩提酛だけでなく、昨今の日本酒ブームをけん引するフルーティーで濃厚なお酒から、和食に合う辛口のお酒まで、こだわりの日本酒が毎年生み出されています。

 

奈良町のなかで、県内29の酒蔵でつくられた地酒を試飲できるのが、奈良県酒造組合認証の奈良酒専門店「なら泉勇斎(ならいずみ・ゆうさい)」です。地酒に詳しいオーナーに相談しながら、季節限定酒を含む約120種類の日本酒を少しずつ気軽に試飲することができます。お気に入りの大和の美酒を見つけてから、酒蔵めぐりをするのもいいかもしれません。

 

奈良の地酒約120種類が味わえる「なら泉勇斎」(1)奈良の地酒約120種類が味わえる「なら泉勇斎」(2)

奈良の地酒約120種類が味わえる「なら泉勇斎」

 


 

登大路ホテル奈良からのアクセス

 

大神(おおみわ)神社

桜井市三輪1422

・JR奈良駅から桜井線(万葉まほろば線)で三輪駅下車、徒歩約5分

http://yamatoji.nara-kankou.or.jp/01shaji/01jinja/03east_area/omiwajinja/

醸造安全祈願祭(酒まつり) 11月14日

http://oomiwa.or.jp/saiten/11-jouzouanzenkigansai/

 

正暦寺

奈良市菩提山町157

・タクシーで約25分

・「県庁東」交差点から国道169号線を約5.6キロ南下、「窪之庄南」交差点を東に折れ、
県道187号線を道なりに約4キロ(途中交差点に看板あり)

・秋の紅葉シーズンには近鉄奈良駅前から臨時バスあり

http://yamatoji.nara-kankou.or.jp/01shaji/02tera/01north_area/shoryakuji/

菩提酛清酒祭

毎年1月(不定期)

http://shoryakuji.jp/event/event2.html

 

なら泉勇斎(奈良県酒造組合認証 奈良酒専門店)

奈良市西寺林町22

営業時間 11:00~20:00(木曜定休・祝日の場合は営業)

販売と試飲(有料)

・もちいどのセンター街の途中、西寺林商店街を東へ入ってすぐ

http://naraizumi.jp/

 

※2018年10月現在の情報です。

 

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