東大寺二月堂修二会(しゅにえ)/ お水取り

東大寺二月堂 修二会(お水取り)
写真:Photographer MIKI

東大寺二月堂修二会(しゅにえ)/ お水取り

世の安寧を願う宗教行事

平城京の「東」にある「大寺」という意味を持つ「東大寺」は、仏法により国を護ろうと、8世紀半ばに創建された官立の寺院です。登大路を道なりに東へ進み、「大仏殿」の交差点を北に折れて国宝建造物「南大門」をくぐると、前方にそびえ立つ大仏殿を中心にして、広大な敷地に数多くの伽藍が点在しています。

大仏殿から東の山腹へと歩みを進めると、東大寺建築の中で最も古い「法華堂(三月堂)」の北隣に、「二月堂(にがつどう)」が見えてきます。傾斜地にせりだすように建てる「懸造(かけづくり)」という技法は、京都の清水寺と同じですが、精緻に組まれた支柱と先端が白く塗られた横木のコントラストが見事です。また、階段を上りきった回廊は、奈良を一望できる絶景スポット。24時間参拝できるので、早朝、夕方、そして夜景と、さまざまな表情が楽しめます。

大仏さまで世界的に知られる東大寺のもう一つの代名詞が、この二月堂で毎年3月1日から14日まで行われる「修二会(お水取り)」です。大仏開眼と同じ752年から1250年以上もの間、度重なる兵火や災害に見舞われながらも、一度たりとも途絶えることのなかったこの法要は、正式名称を「十一面悔過(じゅういちめんけか) 」と言い、旧暦2月に行われてきたために「修二会(しゅにえ)」と呼ばれます。舞台となる二月堂の名前も、このことに由来します。

二月堂のご本尊である秘仏十一面観音の前で、人間がこれまでに犯したありとあらゆる罪や過ちを懺悔し、今後の除病延命を祈る「悔過(けか)」は、奈良時代の祈りの姿を今に伝え、世の安寧を願い続ける厳粛な宗教行事です。

根付きの竹を使った「お松明」  写真:Photographer MIKI

根付きの竹を使った「お松明」  写真:Photographer MIKI

二月から始まる「練行衆」の修行

厳しい戒律を守りながら修二会を勤めあげる僧侶たちは、「練行衆(れんぎょうしゅう)」と呼ばれます。前年12月に選ばれた11人の練行衆は、2月20日から東大寺戒壇院(かいだんいん)の別火坊(べっかぼう)へ移り、寝起きをともにします。「別火(べっか)」とは、他とは区別した火を使うこと。ひとたび別火坊へ入ると、東大寺境内以外への外出は禁じられます。23日までの前半を、試みの別火「試別火(ころべっか)」といい、お水取りで使われる衣装や椿の造花、供え物、法要に使う灯心などをつくり、声明(しょうみょう)の稽古が行われる忙しい期間です。2月26日(閏年は27日)から本格的な別火「惣別火(そうべっか)」が始まると、練行衆は和紙で作った「紙衣(かみこ)」など独特の衣装を身にまとい、さまざまな儀式を行いながら心身ともに修二会本番に備えます。

道案内の灯りが巨大化した「お松明」

2月最終日、練行衆が別火坊から二月堂の参籠所に移り、翌3月1日からいよいよ修二会が始まります。1日を6つの時に分け、それぞれ悔過の法要を行う「六時の行法(ろくじのぎょうほう)」を軸に、「過去帳」の読み上げなど、特定の日にのみ行われる種々の行法が加わります。

19時(12日と14日は別時間、末尾「お松明の時間と本数」を参照)に「六時」のうちの「初夜」を知らせる大鐘が鳴らされると、練行衆を二月堂へ導くための松明(たいまつ)に火がともされます。この松明が歳月を経て大きくなり、「お松明」として親しまれるようになりました。お松明に使う根の付いた6メートルほどもある竹は、2月11日の「竹送り」で京都などから人々に担がれて運び込まれたもの。修二会の裏方として重要な役割を担う「童子(どうじ)」と呼ばれる人たちが、これに杉の葉や板をつけて松明に仕上げ、練行衆が二月堂へ上がる際に暗い道を照らします。めりめりと音を立てながら燃え盛る松明を担いで階段を上った童子は、練行衆を堂内に送り届けた安堵と開放感を表すかのように、お松明を豪快に回転させたり振り回したりしながら回廊を駆け抜けます。

心静かに堪能したい悔過法要の聴聞

一方、参詣者たちが無病息災を願ってお松明の火の粉に見入っている頃、二月堂内陣からは練行衆によるさまざまな作法の音が聞こえてきます。リズミカルに踏みならす木沓(きぐつ)、激しく身体を打ち付ける五体投地、「南無観」の声明、野性的な法螺貝の音色・・・。深夜まで日によって様々な作法が行われます。入場規制のある12日以外は、内陣を囲む局(つぼね)まで入ることができます。2週間の期間のうち一度は堂の下でお松明を、もう一度は堂の上で、天平時代から続く荘厳な雰囲気を心静かに堪能したいものです。

童子(どうじ)の持つお松明の灯りが練行衆の足下を照らす  写真:Photographer MIKI

童子(どうじ)の持つお松明の灯りが練行衆の足下を照らす  写真:Photographer MIKI

激しく火の粉を散らすお松明  写真:Photographer MIKI

激しく火の粉を散らすお松明  写真:Photographer MIKI

「お水取り」と呼ばれる理由

「お松明」で有名になった修二会ですが、その最も重要な儀式は3月13日未明に行われる「お水取り」の行法です。二月堂下の「閼伽井屋(あかいや)」の中の「若狭井(わかさい)」という井戸からくみ上げられた「お香水」が本尊の十一面観音に供えられることから、二月堂の修二会が「お水取り」と呼ばれるようになりました。若狭井の水は、東大寺から100キロ以上北に離れた福井県の若狭(現在の小浜市)に繫がっていると信じられ、若狭神宮寺では毎年3月2日に「お水送り」が行われています。

「お水取り」が無事に執り行われたあとの3日間、深夜に行われるのが「達陀(だったん)」です。達陀帽をかぶった8人の練行衆が、火の粉や香水をまき散らせながら狭い堂内をダイナミックに飛び回ります。こうして2週間にわたる修二会は14日深夜まで続き、15日に満行を迎えます。

「お水取り」で汲み出された「お香水」を内陣へ運ぶ  写真:Photographer MIKI

「お水取り」で汲み出された「お香水」を内陣へ運ぶ  写真:Photographer MIKI

多彩な行法が次々と繰り広げられる「修二会(お水取り)」を裏で支えてきたのが、雑事を担う多くの人びとです。東大寺二月堂の「修二会(お水取り)」は、一身をなげうって人びとの安寧のために行法に励む僧侶と、寺院とともにくらす古都の人々が一体となって受け継いできた、祈りに満ちた伝統行事です。

登大路ホテル奈良からのアクセス

東大寺二月堂修二会(お水取り)

Webサイト

http://yamatoji.nara-kankou.or.jp/01shaji/02tera/01north_area/todaiji/event/v4akpvh7e6/

住所

東大寺二月堂(奈良市雑司町)

情報

毎年3月1日~14日 お松明(たいまつ)の時間と本数

03月 1日(木)〜03月11日(日)
19:00~(10本)約20分間
03月12日(月)
19:30~(11本)約45分間 ※交通規制・入場制限あり
03月13日(火)
19:00~(10本)約20分間
03月14日(水)
18:30~(10本)約10分間 ※混雑が予想される

奈良国立博物館

Webサイト

http://www.narahaku.go.jp/exhibition/special.html

住所

奈良国立博物館(奈良市登大路町50番地)

情報

2月初旬から修二会(お水取り)の期間中、特別陳列あり

※2018年01月現在の情報です。

記事一覧へ