名勝 依水園と寧楽美術館

奈良の贅沢な借景が楽しめる、依水園の「後園」

名勝 依水園と寧楽美術館

奈良の贅沢な借景が楽しめる「後園」

奈良の贅沢な借景が楽しめる「後園」

東大寺に隣接する手入れの行き届いた日本庭園

登大路ホテル奈良を出て東へ、県庁横に新しくできた奈良公園バスターミナルの北東角にある「登大路町」の信号を東へ渡ると、白壁が続く道の奥に、若草山が迫ってくるように見えてきます。一帯を水門町(すいもんちょう)と呼ぶのは、春日山原始林に源を発し、東大寺南大門の南をたどる「吉城川(よしきがわ)」の水量を調節する門があったことに由来するのだとか。万葉集にも詠まれたこの吉城川の美しい水を取り入れてつくられたのが、奈良随一の名園といわれ、古今さまざまな文人に愛されてきた日本庭園で国指定の名勝である「依水園(いすいえん)」です。

江戸時代の特徴が残る「前園」

興福寺や東大寺に囲まれた観光地とは思えない静けさの「三秀亭」

興福寺や東大寺に囲まれた観光地とは思えない静けさの「三秀亭」

依水園は東大寺に隣接し、その総面積は約3400坪(11000平方メートル)に及びます。園内は異なる時代につくられた2つの回遊式庭園に加え、貴重な美術コレクションを展示する「寧楽(ねいらく)美術館」の3つで構成されています。正門から白玉砂利の道を奥へ進み、受付を済ませ庭園に入ると目に入るのが、静けさの漂う池とその向こうの茅葺き屋根の建物「三秀亭(さんしゅうてい)」です。

依水園の最初の持ち主で、奈良特産の麻織物「奈良晒(ならざらし)」を商っていた清須美道清(きよすみ・どうせい)がこの別邸を建てたのは、江戸前期の17世紀後半のこと。池の中ほどに中島を築き、要所に灯籠を配置するなど、江戸時代の庭園の特徴が残されているこの庭園は、現在「前園」と呼ばれています。内部は食事処として利用されており、静寂な庭を眺めながら昼食や抹茶を楽しむことができます。

見事な借景と四季の花が堪能できる「後園」

東大寺南大門、若草山、春日奥山、御蓋山の贅沢な借景が堪能できる「後園」

東大寺南大門、若草山、春日奥山、御蓋山の贅沢な借景が堪能できる「後園」

書院造りの茶室「氷心亭(ひょうしんてい)」の美しい硝子戸の横を抜けると、視界が突然広がります。隣接する東大寺南大門、その奥の若草山、さらに奥に広がる春日奥山、そして春日大社の神山である御蓋山(みかさやま)の頂上部までを一目で見渡すことができ、同時に広々とした池の水面にそれらの借景が映り込む様は、絶景の一言。

「後園」と呼ばれるこの美しい庭園をつくったのは、明治時代の実業家、関藤次郎(せき・とうじろう)です。アセビや桜、ツツジにショウブの花が、そして秋にはドウダンツツジやもみじの紅葉など、四季折々の変化が庭を鮮やかにいろどり、池のまわりに施された小川のせせらぎに太陽のひかりが揺れています。水車小屋の前の飛び石から振り返ると、特徴的な屋根の「氷心亭」と、剣術新陰流で知られる柳生一族の菩提寺のお堂を移築した「柳生堂」を正面から眺めることができます。茅葺き屋根の上に光るのはアワビの貝殻で、カラス除けと火除けのお守りを兼ねているのだそうです。

天井に天平古材が用いられている「氷心亭」と柳生一族ゆかりの「柳生堂」

天井に天平古材が用いられている「氷心亭」と柳生一族ゆかりの「柳生堂」

依水園のすばらしさをより一層引き立てているのが、ゆき届いた日々の手入れです。落ち葉をていねいに拾うのは、苔の光合成を妨げないようにするため。芝生の間から生えてくる雑草も、こまめに抜き取って美しさを保ちます。また、豪快な曲線の竹手すりや、さりげなく置かれた関守石、茶室の待合に置かれたシュロの葉の箒など、自然を取り入れた確かな手仕事が、庭園の美意識を際立たせています。

江戸前期につくられた茶室「挺秀軒(ていしゅうけん)」

江戸前期につくられた茶室「挺秀軒(ていしゅうけん)」

貴重なコレクションを展示する「寧楽美術館」

大和屋根をイメージして設計された「寧楽美術館」

大和屋根をイメージして設計された「寧楽美術館」

二代目の持ち主、関家から依水園を買い受けた三代目中村家の貴重なコレクションを展示するのが、「寧楽美術館」です。東アジアの古美術品や、日本の貴重な陶器や絵画、茶道具などが季節ごとに企画展示されるほか、近年では奈良で活躍する伝統工芸作家の展覧会なども開催されています。庭園とあわせて、日本人が愛でてきた世界観を堪能してみてはいかがでしょうか。

寧楽美術館内部

寧楽美術館内部

登大路ホテル奈良からのアクセス

名勝 依水園・寧楽美術館

Webサイト

https://isuien.or.jp/

住所

奈良市水門町74 電話0742-25-0781

アクセス

ホテル前の国道369号線を東へ、国道169号線を越えて北東へ。徒歩約10分、750メートルほど。

情報

・開門時間9:30~16:30(入園は16:00まで)
・火曜、年末年始休園(ただし4、5、10、11月は無休)

※2019年04月現在の情報です。

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