雪丸と達磨大師 聖徳太子ゆかりの王寺町

達磨寺にある聖徳太子の愛犬「雪丸」の石像

雪丸と達磨大師 聖徳太子ゆかりの王寺町

王寺町と聖徳太子

佐保川や飛鳥川など大和川水系の河川が合流し、大阪へと流れる県境に位置する王寺町。町の名前は、聖徳太子建立ともいわれる「片岡王寺」に由来するとされています。生駒山地の南端と金剛山地の北端が接する場所でもあり、古代から水陸ともに交通の要衝として重要な位置を占めてきました。近年では、大阪の天王寺駅まで約20分という利便性から、ベッドタウンとして人口を増やす一方、「雪丸(ゆきまる)」「達磨」をキーワードにした、聖徳太子ゆかりの里としての一面が注目を集めています。これらの縁起を伝えてきた中心地が、達磨大師と聖徳太子、千手観音菩薩の三尊を本尊とする、「片岡山 達磨寺(だるまじ)」です。

聖徳太子と達磨大師

王寺駅から南へ1キロメートル余りにある達磨寺は、聖徳太子遺跡霊場第十九番 臨済宗南禅寺派の寺院です。聖徳太子が亡くなった斑鳩(いかるが)と、陵墓のある磯長(しなが=現大阪府太子町)を結ぶ「聖徳太子葬送の道」と、国道168号線に挟まれる形で境内が広がります。

「達磨寺3号墳」の上に建っている達磨寺本堂

「達磨寺3号墳」の上に建っている達磨寺本堂

『日本書紀』によると、推古天皇21(613)年12月、片岡の地を訪れた聖徳太子は、飢えに苦しんで道に倒れている異国の人に気づきます。食べ物と衣服を与えた甲斐もなく飢人は翌日亡くなり、太子は手厚く葬りました。ところが後日、墓の中から屍がなくなり、衣服だけがきちんと畳まれて残っていたのです。日本書紀の記述はここまでですが、それとは別に中国の僧、慧思(えし)禅師が仏法を東の国で広めることを達磨大師と約束し、聖徳太子に生まれ変わったという言い伝えがあります。つまり、前世慧思だった聖徳太子は、飢人となった達磨大師と再会し、その墓の上に塚を整え、精舎を建立した…。これが達磨寺の創建縁起になっています。実際、境内には6世紀末頃に築造されたとみられる3つの円墳があり、本堂はその一つ「達磨寺3号墳」の上に建てられています。
出会いの真偽はともかく、本堂の下からは13世紀に埋納された石塔が発掘されています。中世になってもなお、太子と達磨への信仰がこの地で高まりを見せていたことがわかります。

達磨寺本堂には現在、聖徳太子坐像、達磨大師坐像、そして千手観音坐像が本尊として安置されています。本堂が開かれているときには、聖徳太子の精悍な顔つきや、何年も座禅を続け縁起物のだるまのような姿になったという達磨大師の、修行姿を彷彿させる威厳に満ちた姿を間近に拝することができます。そして、中央に置かれた精緻な千手観音坐像の足下の岩座には、観音さまにじゃれつくような犬の後ろ姿が!? それが、次にご紹介する「雪丸」です。

達磨寺本尊の聖徳太子坐像(鎌倉時代)と達磨坐像(室町時代)、ともに国指定重要文化財

達磨寺本尊の聖徳太子坐像(鎌倉時代)と達磨坐像(室町時代)、ともに国指定重要文化財

達磨寺本尊中央の千手観音坐像(室町時代、王寺町指定文化財)、岩座の中央に犬の後ろ姿が?

達磨寺本尊中央の千手観音坐像(室町時代、王寺町指定文化財)、岩座の中央に犬の後ろ姿が?

聖徳太子と愛犬「雪丸」

今も本堂を見守る雪丸像(王寺町指定文化財)

今も本堂を見守る雪丸像(王寺町指定文化財)

国道168号線沿いの西門から達磨寺に入ると、すぐ左手に一風変わった石像が祀られています。聖徳太子の愛犬「雪丸」です。一塊の花崗岩から掘り出されていることや、お座りした姿勢、うしろにくるりと巻いた尾など、狛犬との共通点も多いのだとか。

人のことばを話し、お経も読むことができたという雪丸は、自分が死んだら達磨の墓を守るために、本堂の北東に埋葬してほしいと遺言したのだといいます。現在の本堂に建て替えられる前、雪丸像は実際に本堂の北東にある「達磨寺1号墳」の入口に置かれていました。寛政3(1791)年に刊行された江戸時代のガイドブック『大和名所図会』に、1号墳のあたりに「こまつか」の文字と雪丸らしき像を確認することができますが、石像自体はこの頃の作と見られています。石像の雪丸は、元旦に鳴いたとの言い伝えもあります。古墳に眠っているのが本当は誰なのか、達磨大師と同じく謎は深まるばかりですが、いずれにせよ、聖徳太子信仰が途切れることなく受け継がれ、愛されてきたことを物語っているようです。

『大和名所図会』達磨寺。本堂の北東(赤の円内)に「こまつか」と書かれた犬の像がある

『大和名所図会』達磨寺。本堂の北東(赤の円内)に「こまつか」と書かれた犬の像がある

図会で雪丸像が置かれていた達磨寺1号墳の入口(達磨寺境内)

図会で雪丸像が置かれていた達磨寺1号墳の入口(達磨寺境内)

王寺町公式マスコットキャラクター「雪丸」。駅前ビル5階には「雪丸ミニプラザ」やカフェがありグッズも充実

王寺町公式マスコットキャラクター「雪丸」。駅前ビル5階には「雪丸ミニプラザ」やカフェがありグッズも充実

全方位を見渡せる「明神山」

達磨寺にはほかにも数多くの史跡が残されています。織田信長に攻められ、天正5(1577)年に自害した松永久秀(弾正)の墓もあり、毎年10月の命日前後には追善供養が行われます。久秀が籠城した信貴山から近い王寺町一帯は、交通の要衝で見晴らしもよく、多くの出城が築かれていました。達磨寺の南西に位置する「明神山(みょうじんやま)」は、標高273.6メートルの低い山でありながら、近くの斑鳩の里はもちろん、東大寺や若草山、紀伊山地、大阪の古墳群など、360°世界遺産の大パノラマがひらけています。もしかすると聖徳太子も、ここから世界を見渡していたのかもしれません。

2021年は、聖徳太子1400年御遠忌。聖徳太子ゆかりの土地を訪ね歩いて、太子信仰の奥深さに触れてみてはいかがでしょうか。

明神山の展望デッキにある「悠久の鐘」

明神山の展望デッキにある「悠久の鐘」

明神山の展望デッキからは若草山から大阪のあべのハルカスまで360度の眺望が楽しめる

明神山の展望デッキからは若草山から大阪のあべのハルカスまで360度の眺望が楽しめる

登大路ホテル奈良からのアクセス

達磨寺

Webサイト

http://www.darumaji.jp/

住所

北葛城郡王寺町本町2-1 電話0745-31-2341

アクセス

・王寺駅南口から南へ徒歩約15分(約1キロメートル)
・王寺駅南口から奈良交通バス「明神一丁目」または「白鳳台二丁目」行き「張井」下車すぐ

情報

・境内自由
・本堂は土日祝の10~15時、王寺町観光ボランティアガイド常駐時に拝観可能(平日は要連絡)
・駐車場あり(普通自動車30台)

雪丸ミニプラザ(観光情報コーナー)

Webサイト

http://home.oji-kanko.kokosil.net/ja/yukimaru/plaza

住所

北葛城郡王寺町久度2-2-1-501りーべる王寺東館5階 王寺町地域交流センター内 電話 0745-33-6668(王寺町観光協会)

アクセス

王寺駅下車、北へ直結

情報

8:30~19:00(定休日は第1・第3水曜日、年末年始)

※2019年11月現在の情報です。

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