聖武天皇祭・山陵祭

5月3日、聖武天皇陵で行われる「山陵祭」

聖武天皇祭・山陵祭

聖武天皇の御忌法要

4月になると、奈良の町のあちらこちらで「聖武祭」と書かれた赤い張り紙を見かけるようになります。毎年5月2日と3日に営まれる「聖武天皇祭」と「山陵祭」は、天平勝宝8(756)年5月2日に崩御した聖武天皇の遺徳を偲んで営まれる御忌法要です。東大寺を建立し、大仏造立の詔を発し、その遺愛の品が正倉院に数多く残される聖武天皇の治世は、地震や疫病にみまわれた多難の時代でした。

春になると奈良市内で見かける「聖武祭」の貼り紙

春になると奈良市内で見かける「聖武祭」の貼り紙

文武天皇の第一皇子として大宝元(701)年に生まれた首(おびと)皇子、のちの聖武天皇は、神亀元(724)年に即位し、729年に起こった長屋王の変の半年後に元号を「天平」と改めます。この天平年間(729~749年)は、華やかな宝物のイメージとは裏腹に政争や地震、干ばつが相次ぎ、追い打ちをかけるように流行した天然痘は2年後に再燃し、大流行を起こします。このとき政権を握っていた藤原不比等の息子4人全員が相次いで罹患して死亡、一説に死亡率が30%前後に及んだという国家存亡の危機に、物資の支給や税の免除など復興政策を打ち出した聖武天皇でしたが、天平12(740)年から5年間、疲弊した平城京を離れて恭仁京(くにきょう)や紫香楽(しがらき)、難波(なにわ)などを転々とする日々が続きました。

不安定な情勢が続く天平15(743)年、聖武天皇は華厳経で宇宙そのものをあらわす盧舎那仏(大仏)による救済を求めて「盧舎那仏造顕の詔」を発します。民衆一人ひとりが自発的に、「一枝の草、一にぎりの土」を持ち寄って大仏造立に参加してほしいと呼びかけたのです。生きとし生けるものが共に栄えることを願ったという大仏の開眼供養会は、天平勝宝4(752)年に執り行われ、4年後の5月2日に聖武天皇はこの世を去りました。

荘厳な「聖武天皇祭」

5月2日午前8時から、南大門東側の勅使門の奥にある「天皇殿」にて、最勝十講の論議法要が3時間余りにわたって行われます。聖武天皇をまつり普段は公開されていませんが、この日に限り五色幕で飾られた美しい天皇殿を8時から14時まで屋外から参拝することができます。

5月2日の8時から14時の間のみ公開される東大寺天皇殿(屋外のみ)

5月2日の8時から14時の間のみ公開される東大寺天皇殿(屋外のみ)

13時からは式衆や稚児など約250人からなる行列が南大門を経て大仏殿へ向かい、到着後に「聖武天皇慶讃法要」が営まれます。同時に大仏殿前の鏡池水上舞楽台では舞楽や慶讃能が奉納され、東大寺境内はいつにも増して荘厳な空気に包まれます。

聖武天皇慶讃法要を終えた式衆の列(5月2日)  写真:松本純一

聖武天皇慶讃法要を終えた式衆の列(5月2日)  写真:松本純一

大仏殿前の鏡池水上舞楽台で舞楽や慶讃能が奉納される(5月2日)

大仏殿前の鏡池水上舞楽台で舞楽や慶讃能が奉納される(5月2日)

陵墓前に声明が響く「山陵祭」

東大寺二月堂からの景色。右奥に広がる森の手前部分が聖武天皇陵

東大寺二月堂からの景色。右奥に広がる森の手前部分が聖武天皇陵

5月3日、国宝 転害門をくぐり法要に向かう東大寺の僧侶

5月3日、国宝 転害門をくぐり法要に向かう東大寺の僧侶

翌5月3日、東大寺からほど近い聖武天皇陵(佐保山南陵)で、「山陵祭(さんりょうさい)」が行われます。8時30分に大仏殿を出発した一行は、この日特別に開かれた境内北西の国宝「転害門(てがいもん)」を一列にくぐり抜け、平城宮大極殿につながる一条通りを西へ500メートルほど徒歩で進みます。僧侶一行が信号を渡って生活道路を足早に通り過ぎる光景は、古都奈良といえ、普段あまり目にすることはありません。

午前8時半過ぎ、一条通を西へ進む東大寺の僧侶(5月3日)

午前8時半過ぎ、一条通を西へ進む東大寺の僧侶(5月3日)

聖武天皇陵に向かう東大寺の僧侶。普段あまり見られない光景(5月3日)

聖武天皇陵に向かう東大寺の僧侶。普段あまり見られない光景(5月3日)

佐保川に隣接する聖武天皇陵(佐保山南陵)に到着すると、早速法要の準備が整えられます。屋外に響く声明にいざなわれるように鳥がさえずり、生い茂った木々が五月の風に揺れるなか、法要がつつがなく執り行われます。続いて隣り合う光明皇后陵(佐保山東陵)にも参拝した一行は、来た道を大仏殿に戻り、11時頃からは大仏殿内正面宝前で再び法要と献茶、献花が行われます。終了後には例年、大仏殿回廊にて抹茶がふるまわれ、14時頃にはすべての法要が終わります。

災害や疫病に科学的にアプローチすることが困難だった古代に、仏教文化を取り入れ、祈りによって平和と安寧を取り戻そうとした聖武天皇。その祈りの原点は、現代の私たちと何ら変わるところはないのかもしれません。

聖武天皇をまつる佐保山南陵に参拝する僧侶(5月3日)

聖武天皇をまつる佐保山南陵に参拝する僧侶(5月3日)

聖武天皇陵に隣り合う光明皇后陵でも読経が行われる(5月3日)

聖武天皇陵に隣り合う光明皇后陵でも読経が行われる(5月3日)

※2020年の聖武天皇祭・山陵祭については、新型コロナウイルス感染予防のため、規模を縮小して開催される予定です。最新情報は東大寺HPにてご確認ください。
http://www.todaiji.or.jp/index.html 

登大路ホテル奈良からのアクセス

東大寺大仏殿

Webサイト

http://www.todaiji.or.jp/contents/access/

住所

奈良市雑司町406-1 電話0742-22-5511

アクセス

登大路を東へ、南大門前交差点を北へ。徒歩約20分(1.5キロメートル)
奈良交通バス・市内循環バス「東大寺大仏殿・春日大社前」下車、北へ徒歩約5分

聖武天皇陵 光明皇后陵

住所

奈良市法蓮町

アクセス

近鉄奈良駅 行基広場前から信号を北へ渡り、商店街の突き当りを東へ曲がり1つめの道を北へ。
道なりに北上し、一条通の法蓮橋を渡った北側。徒歩約15分(1.2キロメートル)。
「転害門」は一条通の東端。聖武天皇陵から直線で500メートル。

※2020年04月現在の情報です。

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